陰謀論を扱った漫画3選(どくしょ部おすすめ特集15)

 年間1,000作品近く漫画を読んでいるDMMブックスの書店員が、独断と偏見に基づいて作品をレコメンドする「DMMブックスどくしょ部おすすめ特集」シリーズ第15弾。今回は「陰謀論」を扱った国内外の漫画を3作品ピックアップしました。陰謀論に傾倒した母親によって、家族が壊れていく過程をドキュメントタッチに描いて話題を呼んだ『母親を陰謀論で失った』。国内外の陰謀論を総ざらいした大御所作家の異色作『風水ペット』。そして、奇妙な読み心地のグラフィック・ノベル作品『サブリナ』をご紹介します。

陰謀論による家庭崩壊を描いたエッセイ漫画

母親を陰謀論で失った

母親を陰謀論で失った

母親を陰謀論で失った

noteで話題となった記事「母親を陰謀論で失った」に大幅な脚色を加え、コミック化。親子愛の限界を問う、胸えぐる衝撃作。【あらすじ】「2020年春。新型コロナウイルスのまん延により、私たちの生活は大きく変わった。それは生活だけでなく、強固だった人間関係にも影響を及ぼした」東京で妻と暮らす息子・ナオキ、地方で父と暮らす母親・ケイコ。どこにでもある仲の良い親子だったふたり。コロナ禍の度重なる社会不安により会えない日々が続くが、お互いを想い合って過ごしていた。しかし、ある時期から母親が怪しい動画を送りつけてくるようになり―――。陰謀論を信じる母親に揺り動かされる息子とその家族たち。「母親が信じる陰謀論の正体とはなんなのか?」「陰謀論を信じている人はどんな人なのか?」そして「なぜ母親は陰謀論を信じてしまったのか?」その真相に迫る過程を息子視点で描いた濃密なセミフィクション。【「シリーズ 立ち行かないわたしたち」について】「シリーズ 立ち行かないわたしたち」は、KADOKAWAコミックエッセイ編集部による、コミックエッセイとセミフィクションのシリーズです。本シリーズでは、思いもよらない出来事を経験したり、困難に直面したりと、ままならない日々を生きる人物の姿を、他人事ではなく「わたしたちの物語」として想像できるような作品を刊行します。見知らぬ誰かの日常であると同時に、いつか自分にも起こるかもしれない日常の物語を、ぜひお楽しみください。

 「ワクチンは毒」「真実に気づいてしまった」……もしも肉親がそのような言葉しか言わなくなってしまったら? 陰謀論が生きる意味となってしまった人に対して、私たちはどうすればいいのでしょうか。
 本書はnoteで掲載されて話題になった記事「母親を陰謀論で失った」をコミックエッセイ化した作品です。コロナ禍という未曾有の事態で、陰謀論を信じた母親の言動が少しずつおかしくなっていき、次第に家族関係が壊れてしまう過程がリアルに描かれています。
 専門家の解説と作者の冷静な視点を交えつつ、同時に陰謀論を信じている人が見ている世界も描かれているのが特徴。陰謀論に陥る人には、陥るだけの背景や理由がある……一筋縄ではいかない問題について、深く考えるきっかけになる良書です。

世界経済と陰謀論を掛け合わせた異色作

風水ペット(全4巻完結)

風水ペット (1)

風水ペット (1)

風水+ペット+経済展望=花輪流投資術!?可愛い動物たちには、秘められた能力が……!?中華の歴史脈打つ「風水」を利用し、ニッポン経済はもちろん世界市場を迎え撃つのは、とある田舎の一軒家。風水の力を最大限に利用出来るという「龍穴」を源に、世界経済を読み解き、来たるべき世界恐慌に「お金」で対抗する!?驚天動地の花輪和一ワールド、新機軸へ!!

 『刑務所の中』などで知られる奇才・花輪和一が、「風水によって動く世界経済」をテーマに描いた異色作。もしも、ハムスターの動きが株式市場を支配していたら? 満州鉄道をめぐる争いがいまだに続いていたら? 北海道には戦時中の思想が現在でも強く残っていて……。さまざまな陰謀論が一つの物語の世界で矛盾することなく同居している、それが『風水ペット』という作品の世界です。リアルな陰謀論ドキュメントともいえる怪作に仕上がっています。奇妙で摩訶不思議な漫画を読みたい方にぜひおすすめの一作です。

失踪事件をめぐる陰謀論を描いたグラフィック・ノベル

サブリナ

サブリナ

サブリナ

【カラー/固定型】カラー・大画面での閲覧に最適化されたコンテンツです/ある女性が失踪した。その後、彼女に関する衝撃的な映像を収めたテープが新聞社に送られてくる。その映像はインターネットを席捲し、噂や憶測、陰謀論が湧き上がる。ゼイディー・スミス、エイドリアン・トミネ絶賛。現代社会を映し出す傑作グラフィックノベル

 行方不明になった女性・サブリナをめぐる事件を群像劇形式で描いたグラフィック・ノベル作品です。グラフィック・ノベル初のブッカー賞候補作となり、世界的な文学的評価を獲得しました。
 傷や不安を抱えた人間のもとに襲いかかるフェイクニュース。デマに扇動された人々によって不気味にゆがんでいく日常。狂っているのは自分なのか、この世界なのか、それとも両方か……。心神喪失状態の登場人物たちを虚無の顔として描き抜いたその表現技法にうならされます。陰謀論が渦巻く現代だからこそ、真に迫ったリアリティによって唯一無二の背筋が凍るような読後感へ導かれます。

終わりに

 陰謀論を扱った3作品の漫画をご紹介しました。どの作品も現代のネット社会の問題などにリンクするような、不穏な空気が感じられます。
 今回ご紹介したグラフィック・ノベル作品『サブリナ』が好きな方は、同著者・ニック・ドルナソの最新刊『アクティング・クラス』もおすすめ。ぜひ、チェックしてみてください!
 DMMブックスには、無料で試し読みできる作品や、キャンペーン中の電子書籍がたくさんあります。無料のビューアーとアプリで簡単に読むことができるので、ぜひお試しください!

関連作品

アクティング・クラス

アクティング・クラス

【カラー/固定型】カラー・大画面での閲覧に最適化されたコンテンツです/倦怠期の夫婦、シングルマザーにヌードモデル。社会にうまく馴染めない10人は、人生の変化を求めて演技教室に通い始める。謎の男ジョン・スミスが指導する即興演技クラスに参加するうちに、現実と演技の境界は曖昧に。カラフルに彩られた不穏さが身に迫る新作

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多種多様な作風を1冊で楽しむ、アンソロジー漫画(どくしょ部おすすめ特集14)

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