”ミステリーの女王”と称されるアガサ・クリスティ。今回はアガサ・クリスティの映像化された原作や、少し変わり種のおすすめ小説を5作品ご紹介します。
アガサ・クリスティは1920年に『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビューし、85歳でその生涯を閉じるまで数ある名作を残しました。『オリエント急行殺人事件』などの代表作は多くの言語で翻訳され、世界中のミステリーファンから親しまれています。2023年9月15日(金)には、ケネス・ブラナーが手がける実写映画「名探偵エルキュール・ポアロシリーズ」第3弾『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』が公開。本記事では原作小説『ハロウィーン・パーティ』もピックアップしているので、ぜひチェックしてくださいね。
DMMブックスでは9月15日(金)から9月28日(木)にかけて、アガサ・クリスティ作品の割引セールを実施します。期間内は、早川書房の対象作品が50%割引で大変お得にご購入いただけるので、ぜひこの機会をお見逃しなく!(今回ご紹介している『謎のクィン氏』は割引対象外です)
映画化作品の原作4選
アガサ・クリスティの映画化された小説を4作品ご紹介します。
今回「名探偵エルキュール・ポアロシリーズ」から、『ハロウィーン・パーティ』『オリエント急行の殺人』『ナイルに死す』の3作品を選びました。本シリーズは作品同士につながりがないので、どの順番で読んでも問題ありません(ただし、最終作の『カーテン』は最後に読むことをおすすめします)。気になった作品から読んでみてください!
ハロウィーン・パーティ
ハロウィーンパーティの準備中に「殺人を見たことがある」と言った少女が、パーティの当日に不可解な死を遂げます。事件の調査を引き受けたポアロ。手がかりとなるのは、殺された少女が残した言葉のみで、これにはポアロもお手上げかと思われますが、過去に起きた事故や事件について登場人物に聞き込みをすることで謎を解いていきます。
2023年9月15日(金)に公開される実写映画『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』の原作小説です。映画のタイトルはベネチア(イタリア)となっていますが、小説の舞台はイギリスのロンドンから遠く離れた片田舎です。映画では、「ポアロが霊媒師のトリックを見破るためにハロウィーンの降霊会に参加する」というあらすじですが、小説にはそのようなシーンはありません。予告編やあらすじを見る限りでは、原作というより原案に近いのかもしれませんね。
ちなみに降霊会などオカルト要素がある作品が好みの方は、アガサ・クリスティの『シタフォードの秘密』や『蒼ざめた馬』もおすすめです!
オリエント急行の殺人
言わずと知れた歴史的名作ミステリー。ケネス・ブラナーが手がける実写映画「名探偵エルキュール・ポアロシリーズ」第1弾『オリエント急行殺人事件』の原作です。何度も映像化されている作品で、日本でも三谷幸喜が原作を元に、スペシャルドラマを手がけました。
ネタバレ厳禁で有名ではあるものの、多くの漫画や小説、映画などでオマージュ、パロディされているので、間接的に内容を知っている方も多いのではないでしょうか。しかし、あらためて読んでみると、トリックや犯人を知っていたとしても見事に引っかかってしまう巧妙な展開に、いい意味で裏切られます。そして、ラストは綿密に張られた伏線を見事に回収……まさにミステリーの教科書です!
ナイルに死す〔新訳版〕
ケネス・ブラナーの「名探偵エルキュール・ポアロシリーズ」第2弾『ナイル殺人事件』の原作です。
本作は約300ページの長編を、事件前・事件後の前後編でわけた構成になっています。前半は、美貌の資産家・リネット、その夫のサイモン、リネットの友人でサイモンの元婚約者のジャクリーヌ、この3人の三角関係と、ナイル川ツアーなどのエジプト観光が主に語られます。驚くことに、このページ数が約半分を占めているのです!
事件が始まるまで長いと思われる方もいるかもしれませんが、この前半が大変エキゾチック。アガサ・クリスティ本人もまえがきで「”外国旅行もの”のなかで最良の作品のひとつ」と評しています。旅情をかき立てられる情景描写と少しだけ不穏な人間ドラマが繰り広げられる前半、事件が起きてからものすごいスピードで伏線を回収して解決する後半、この2つの観点から楽しめる作品です。
ゼロ時間へ
フランスの映画監督、パスカル・トマの『ゼロ時間の謎』の原作です。こちらは上記の3作品とは異なり、「名探偵エルキュール・ポアロシリーズ」ではありません。
通常のミステリー小説は「最初に殺人事件が起きて、探偵が謎を解明していく」という流れが王道ですが、本作は殺人事件が起きるタイミングを「ゼロ時間」とし、そこに向かうまでの様子が描かれています。殺人事件は始まりではなく、動機があり、計画があり、それを経ての「結果」なのです。
この構成もおもしろいのですが、「ミステリーの常識を覆した」と評される訳は、また別にあります。綿密な殺人計画を練っている犯人は誰なのか、そこまでして殺したい人物は誰なのか、ゼロ時間に近づくに連れて高まっていく緊張感がたまりません。
書店員おすすめのクリスティ作品
早川書房が出版しているアガサ・クリスティ作品の数はなんと100冊以上! その中でも、今回は書店員がイチオシするおすすめの1冊、『謎のクィン氏』をご紹介します。
(『謎のクィン氏』は、2023年9月実施のアガサ・クリスティ作品の割引セール対象外です)
謎のクィン氏
英国の老紳士サタースウェイトは、人々の間に起きるドラマをつぶさに見つめる人生の観察者。彼が出会う人々はしばしば、人生の不安や悩み・心残りを抱えており、中にはそれが原因で目の前で殺人事件が発生することも。そしてサタースウェイト氏は、神出鬼没な謎の友人ハーリ・クィン氏がそばにいるとき、事件の謎を解く神秘的な直感を得る事ができるのです。
この作品は、サタースウェイト氏が接した12編の事件をつづる連作短編集です。本作がおもしろいのは、神秘的で全てを見通している雰囲気を持つハーリ・クィン氏が、事件に決して口出しをしないところです(「ハーレクイン」という単語は道化師を意味しています)。全てを解決するのは観察者であるサタースウェイト氏。たとえるならばホームズではなくワトソンが常に物語を解決するようなもの、探偵と助手の関係が逆転しているのが斬新です。
各話での謎の問いかけとその解決は、どれも鮮やかで驚きの連続。しかし、人生の中で抱える長年の謎や不安をサタースウェイト氏が解決するとき、絶望の底から人々が救われることもあれば、思いも寄らぬ展開が訪れることも……。
本作は、サタースウェイト氏がつぶさな観察力で事件を紐解いていく探偵小説であると同時に、彼が傍観者でしかないことを暴き出す物語でもあります。最後のページを読んだとき、読者は言い知れぬ不安を抱くことになるでしょう。
(『謎のクィン氏』は、2023年9月実施のアガサ・クリスティ作品の割引セール対象外作品です)
終わりに
アガサ・クリスティの魅力は、ポアロやミス・マープルをはじめとする魅力的なキャラクター、読みやすい自然な会話からなる時代にとらわれない普遍的な人間ドラマ、建物から小物まで細部にわたって丁寧につづられる情景描写、ミステリーやトリックの引き出しの多さなど、多面的です。特にリアルな人間描写については、ミステリー小説の中でも群を抜いて秀逸。世紀を超えて読み続けられている名作ばかりなので、ぜひお気に入りの作品を見つけてください。
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