2023年7月6日に板垣巴留『SANDA』9巻が発売されました。本作は、サンタクロースの末裔である少年が、自らの命を狙う大人たちに立ち向かう近未来学園ジュブナイルです。一方、『SANDA』にはディストピアSFとしての大きな魅力も備えています。今回は、年間1,000冊読んでいるDMMブックスの書店員が、ディストピアSFとしての『SANDA』の魅力をご紹介します。
『SANDA』のあらすじ
近未来の東京で暮らす少年・三田一重(さんだ・かずしげ)は、大人しい性格の中学生。実は「サンタクロース」の末裔である彼は、ある条件を満たすと、ひげもじゃ白髪の老人・サンタクロースに変身します。その秘密に気づいた同級生の冬村四織(ふゆむら・しおり)は、行方不明の友人を探し出すために、サンタクロースである三田の協力を求めてきました。大人たちから命を狙われながら、三田は子どもたちの希望として人助けをしていくことに……。
漫画家・板垣巴留(いたがき・ぱる)が「サンタクロース」をテーマに執筆した作品です。板垣巴留は、肉食動物と草食動物が共存する社会を舞台にしたアニマルSF『BEASTERS』の作者でもある人気漫画家です。動物のキャラクターたちが種族間の壁を背景に争いつつ、その壁を乗りこえようとする様子がヒューマンドラマとして話題を呼び、2019年と2021年に二回アニメ化されました。
ちなみに、板垣巴留の父親は『刃牙』シリーズの作者・板垣恵介。過去には親子対談のインタビューをおこなったこともあります。
ディストピアSFとしての魅力
本作は「サンタクロースに変身する主人公」という、ファンタジー設定がまず目をひきます。一方、近未来を舞台にしていることもあり、SF作品としての魅力も大きいです。
『SANDA』における特徴の一つは、人口が大幅に減少した2080年の近未来に舞台が設定されている点です。現実社会の未来を先取りするような時代設定は、『BEASTERS』で種族間の断絶を描いた板垣巴留ならではの手腕が光ります。
そんな近未来設定を、本作では「大人が子どもを統制する管理社会」として描かれています。
人口が大幅に減った未来では、子どもは国の将来を担う重要な存在です。一方で、大人にとって子どもは「衰退した国を維持していく」ためのもの。大人の期待通りに育てるために、子どもが希望を抱きのびのびと自由に育つことを望まないのです。なので本作では、大人が子どもの育成方法を厳密に管理し、身体が大人へ成長する(第二次性徴を迎える)のは大きな罪であるかのように描かれています。実際に、あるキャラクターが第二次性徴を迎えたことで、学園長から命を狙われるという展開も……。
だからこそ、サンタクロースというファンタジー設定が意味を持つことになります。なぜなら、サンタクロースとは子どもにとって希望の象徴だからです。
そのため、三田は手強い大人たちから命を狙われています。サンタクロースを狙う「赤衣(あかえ)の特捜隊」たちや、全身を人工臓器に置き換え老化に抗う大黒愛護学園の学園長・大渋など、ひと癖ふた癖もある相手とのアクションバトルも大きな魅力です。
巻を追う毎に末裔が増える!
『SANDA』では、巻が進むにつれてサンタクロース設定についても深掘りされていきます。5巻以降ではサンタクロースの相棒・トナカイの末裔、8巻ではジャック・オ・ランタンの末裔が登場。
2023年7月6日発売の9巻では、三田は大人たちに対抗するため、なまはげや織姫・彦星、パーントゥにミズカブリの末裔を大黒愛護学園に集めはじめます。キャラクターが一気に増えることで『SANDA』はますます盛り上がりを見せていきます。未読の方は、ぜひこの機会に読んでみてくださいね。
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