1986年12月25日に創刊された『アフタヌーン』。今年で37年目を迎え、ファンタジー・アクション・ヒューマンドラマ・SFなど、取り扱うジャンルの幅広さが印象的で、多くの作品がアニメ化やドラマ化もされています。
今回は、年間1,000作品近く漫画を読んでいるDMMブックスの書店員が、『アフタヌーン』作品の中から、ヒューマンドラマが魅力の漫画を4作品厳選。青春時代を描いた作品から、命や思想がテーマとなっている作品まで。心に響くおすすめの作品をピックアップしてみたので、ぜひ手に取ってみてください。
人間模様に心打たれるおすすめの漫画
主人公と周りを囲む人間模様に衝撃が走る、おすすめの作品を2作品ご紹介します。
ダーウィン事変
テロ組織「動物解放同盟（ALA）」が生物科学研究所を襲撃した際、妊娠しているメスのチンパンジーが保護された。彼女から生まれたのは、半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」チャーリーだった。チャーリーは人間の両親のもとで15年育てられ、高校に入学することに。そこでチャーリーは、頭脳明晰だが「陰キャ」と揶揄されるルーシーと出会う。「テロ」「炎上」「差別」……ヒトが抱える問題に、「ヒト以外」のチャーリーが、ルーシーとともに向き合うヒューマン＆ノン・ヒューマンドラマ。作品集『パンティストッキングのような空の下』が「このマンガがすごい！」2017（宝島社）のオトコ編第4位にランクインし、話題になった漫画家・うめざわしゅんによる連載作品、開幕！
人間とチンパンジーの子どもが社会問題と直面するSFヒューマンドラマ。2022年に「マンガ大賞」を受賞しています。
動物保護を目的にテロ活動をおこなう「動物解放同盟（ALA）」は、襲撃した生物科学研究所で「人間の子ども」を妊娠したチンパンジーを発見。人間とチンパンジーのハーフ・チャーリーは人間の養子として成長しますが、ALAは自分たちの活動のために、成長したチャーリーを利用しようと画策しはじめます。
「人間と動物の線引きの曖昧さ」を読者に突きつける本作。「人の中で生きる、人ではない主人公」を通して、動物保護や種差別といった社会的テーマに新たな視点を与えています。命の尊厳やヴィーガニズムなど、世界の本質的な矛盾を突くようなテーマがあわさることで、独自の世界観を作りあげています。
波よ聞いてくれ
舞台は北海道サッポロ。主人公の鼓田ミナレは酒場で知り合ったラジオ局員にグチまじりに失恋トークを披露する。すると翌日、録音されていたトークがラジオの生放送で流されてしまった。激高したミナレはラジオ局に突撃するも、ディレクターの口車に乗せられアドリブで自身の恋愛観を叫ぶハメに。この縁でラジオ業界から勧誘されるミナレを中心に、個性あふれる面々の人生が激しく動き出す。まさに、波よ聞いてくれ、なのだ！
2020年に「マンガ大賞2020」4位受賞、さらにアニメ化や実写ドラマ化もされた大人気作！
主人公・鼓田ミナレは、失恋のショックから出会った相手に酔っ払って愚痴をこぼします。しかし、話した相手はラジオ局員！ ミナレのトークを勝手に録音してラジオで放送しはじめます。怒ったミナレはラジオ局に乗り込みますが、その場の流れでパーソナリティを任されることに！？
ミナレの圧倒的なキャラクター性が魅力の本作。ミナレの軽快でユーモラスな会話センスによって、ラジオ未経験の素人がパーソナリティを務める怒涛の展開が成立しています。『無限の住人』とはひと味違う、沙村広明のパワフルなラジオコメディをぜひお楽しみください！
青春ドラマに感動必至のおすすめ漫画
青春時代をひたむきにかけていく爽快感が魅力の、おすすめ漫画を2作品ご紹介します。
ワンダンス
大迫力のダンスシーンに、輝く青春ドラマ！
高校生の小谷花木（こたに・かぼく）は高身長ですが、目立つのが苦手。周囲に合わせる生活を送っていましたが、クラスメイト・湾田光莉（わんだ・ひかり）が踊る姿に惹かれ、ダンスの世界に踏み込みます！
自分を表現するため、部のメンバーとダンスに打ち込む姿にまさに青春を感じる本作。人から見られることにトラウマを感じていても、立ち向かう姿に励まされます。躍動感にあふれたダンスシーンの表現力も唯一無二！
作中でマイケル・ジャクソンやエド・シーランなど、有名アーティストの楽曲も登場するので、音楽好きな方にもおすすめの作品です。
ブルーピリオド
成績優秀かつスクールカースト上位の充実した毎日を送りつつ、どこか空虚な焦燥感を感じて生きる高校生・矢口八虎（やぐち やとら）は、ある日、一枚の絵に心奪われる。その衝撃は八虎を駆り立て、美しくも厳しい美術の世界へ身を投じていく。美術のノウハウうんちく満載、美大を目指して青春を燃やすスポ根受験物語、八虎と仲間たちは「好きなこと」を支えに未来を目指す！
好きなことへのひたむきな努力を描いた、芸大青春漫画！ 2021年にはアニメ化もされた、人気作です。
矢口八虎はクラス内では上位カースト、成績も優秀。しかし、充実した毎日の反面で空しさを感じていました。そんなある日、偶然見かけた絵画の虜になり、絵画の世界に足を踏み入れます。絵を描いていくうちに自分でも気づけなかった「自分」に気づいていく成長ドラマです。
作者の山口つばさは東京藝術大学出身。そのため、藝大にまつわる描写のディティールが大変細かいのが特徴です。一読するだけで「絵を描くこと」に対する解像度がものすごく上がります。心の底から挑戦してみたいと思えることに出会えたときの感動はひとしお。どこか焦燥感を感じていた八虎が、好きなことを見つけ必死になる姿は胸が熱くなります。
絵を通して自分自身を表現することの難しさと尊さを、本作からぜひ感じてください。
終わりに
それぞれが抱える問題や悩みがありつつも、一生懸命向き合おうとする姿に勇気をもらったり、考えるきっかけをくれたりするのが、フィクションの持つ力です。作品を通じて、自分自身と向き合うきっかけになれば幸いです。
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