松本零士を語る上で外せない名作8選 隠れた傑作もご紹介!

 『銀河鉄道999』や『宇宙海賊キャプテンハーロック』など数多くの作品を世におくり出した巨匠漫画家・松本零士。「スペースオペラ(宇宙活劇)の指揮者」として先日の訃報にも世界的な反響がありました。彼が残した作品群のなかで特にファンの間で評価が高く、濃密な零士サーガが展開されている作品をご紹介します。

巨匠・松本零士の名作選!

 松本零士についてより深く知るための作品群をより抜きました。ファンの方はもちろん、松本零士に触れたことがない方にも入口として最適な作品をご紹介します。

四次元世界(全1巻完結)

四次元世界

四次元世界

▼第1話/ヤンの生きた世界▼第2話/未完成▼第3話/第3生命帯▼第4話/新世界はむらさきの空▼第5話/ヒミコの矢▼第6話/電話▼第7話/幽霊世界▼第8話/わが愛の幻影▼第9話/無限世界のヤン▼第10話/みどりの国のマーヤ▼第11話/さらば生命の時▼第12話/サレルヤの森▼第13話/蛍の青い火▼第14話/幻想世界のアム▼第15話/140万光年の沈黙▼第16話/インパールの雪▼第17話/古本屋古本堂▼第18話/緑の環▼第19話/ブーメラン▼第20話/枯木霊歌▼第21話/グリーンインセクター▼第22話/海軍拳銃1851▼第23話/衛星2連独房▼第24話/狂詩曲第五番▼第25話/無限軌道1997 ●あらすじ/太陽に飲み込まれる寸前に、地球を脱出してきた者たちが住む惑星でのこと。祖父と洞窟に住むヤクは、壁に絵を描いて暮らしている。彼は力が弱く、他の男たちのように狩りをすることができない。そして彼の絵のモデルになっていたマヤは、そんな彼に愛想を尽かして、強い男ムウに従って旅に出ていってしまう。弱肉強食の世界が始まったのだ(第4話)。▼売れない絵描きをしている蜜蜂のヤンは、家のそばで美しいカゲロウのレアがうずくまっているのを見つけ、休ませることにする。ヤンは光り輝くような彼女に惚れてしまい、「いつまでもここにいていいよ」とまで言うのだが、金色に輝く身体を持つロロが迎えに来ると、彼女はヤンを捨てて出ていってしまうのだった。「あなたは自分の世界を持っている。私達には目に見えるものだけしか持ち合わせがない」という言葉を残して…(第9話)。

 濃密なロマンとエロティシズムが炸裂する! 貧乏漫画家の少年が、昆虫を擬人化した儚げな美女と出会う連作作品群です。
 松本零士が描く苦学生が、宇宙を見据えたミステリアスな美女とつかの間の邂逅をするという展開の飛翔が癖になる本作。絵柄には初期の少女漫画のタッチの名残があり、詩的な風格を感じさせます。高橋葉介や諸星大二郎など、人体と異物が溶けあっていくモチーフの作家が好きな方におすすめの作品集です。

ワダチ(全2巻完結)

ワダチ (1)

ワダチ (1)

貧乏で冴えない浪人生・ワダチこと山本轍(やまもと・わだち)が、むりやり移住させられた新惑星‘大地球’でたくましく生きていく姿を描いたSFファンタジー。屋台を引いてアルバイトしていたワダチは、車に轢かれて負傷し、そのうえ部屋に隠していた全財産も盗まれてしまう。そして一文無しになったワダチが、再び金を稼ごうと働いていたおでん屋台に、美術大学研究所の教授・佐渡酒造(さど・さかぞう)がやってきて……!?

 四畳半ハードSFファンタジー! 松本零士の世界観を堪能せよ!
 地球上の人類を、惑星「大地球」に移住させるという「カミヨ計画」。そんな壮大な計画に協力することになった、冴えない浪人生・山本轍。
 描線に艶やかさがありつつ、日々を彩るギャグもテンポよく冴えわたり、松本零士の隠れた傑作として名高い本作。あのハーロックがいつものハーロックとは違い、とても弱々しく描かれている点も見どころです。

トラジマのミーめ(全1巻完結)

トラジマのミーめ

トラジマのミーめ

『銀河鉄道999』の松本零士が、青春時代をともにした愛猫・ミーくんとの思い出を描く。ある雪の日、あつ子の家に迷いこんできたトラジマ猫。それが、あつ子一家とミーの出会いだった。かわいいミーと、ミーをとりまくあつ子一家や仲間の猫たちの毎日は悲喜こもごも。14年間を自由に生きたミーのハートフルストーリー。

 切なく、泣ける! 松本零士の猫漫画!
 松本零士の実際の飼い猫をモデルにして描かれたかわいい猫・ミーと、ミーをとりまく家族のドタバタをハートフルに描いた作品です。本作のミーは、端役ながら『銀河鉄道999』や『宇宙海賊キャプテンハーロック』にも登場しており、ファンには外せない一冊です。
 現在とは異なるペット事情など、人間と猫の関わり方についても深く考えさせられます。優しい涙を流したい方にもおすすめの作品です。

ケースハード(全6巻完結)

ケースハード (1)

ケースハード (1)

地球上の、いたる所の空に、海に、大地に、戦争があった。今もある…。自ら望まず戦場に連れてこられた兵士たちも、そこで激しい戦闘に巻き込まれていく。そして人間的なドラマも時に展開されていく。戦争と、機械と、人間とのかかわりを、様々な戦場を舞台に描き、切実な人間ドラマを見つめる松本ワールド。傑作シリーズ「ザ・コクピット」を引き継ぎ、超えて羽ばたく新・戦場ロマンだ。

 圧巻の戦場漫画シリーズ! さまざまな戦場を舞台に、一人の兵隊のドラマを淡々と描き好評を博した松本零士「戦場まんがシリーズ」の作品です。
 戦局も、敵の素性も、味方の姿さえわからないまま、ひたすら孤独に内省を繰り広げながら戦い続ける男たちの姿。都合のいい出来事は起こらず、なすべきことがなされないまま命が次々と尽き果てていきます。
 松本零士の作品では主人公達が旅の途上で終わる作品も数多くありますが、本作のハードボイルド度合は群を抜いています。生身の人間との間で描かれる黒光りする機械との関係性に注目して読んでみてください。

マシンナーズ<完全版>(全1巻完結)

マシンナーズ<完全版>

マシンナーズ<完全版>

『銀河鉄道999』や『宇宙海賊キャプテンハーロック』など多くの名作漫画を送り出してきた巨匠・松本零士が、地球最後の日本人、モリ・シゲルの孤独な戦いを描く近未来サスペンス。長い長い宇宙探索の旅から地球に戻ってきたモリは、何者かによって記憶を消されてしまう。覚えているのは、自分が最後の日本人であるという事だけ……。なぜ、日本人は消えしまったのか? 謎を追うモリの手には、孤独しか残らない……。

 裏切りと狂気のダークサスペンス!
 長い長い宇宙の旅から帰還したモリ・シゲルは、なんと地球最後の日本人になっていた! さらに記憶もすべて奪われてしまい……。東京は壊滅したのか、翻弄されるモリの孤独な旅を描いた物語です。
 モリと邂逅していく松本零士的ヒロインたちが艶やかで、夢中になる本作。裏切りと嘘と残酷な現実が押し寄せるハードさも魅力です。翻弄されるモリと悲しい結末の数々。松本零士中期の傑作であり、ハードな雰囲気に包まれたサバイバル冒険譚としておすすめの作品です。

電光オズマ(全3巻完結)

電光オズマ (1)

電光オズマ (1)

地球の平和を守るヒーロー・電光オズマの活躍を描いたSFアクション。謎の潜水艦によって父を殺された塚森ススム(つかもり・すすむ)は、無謀にも単身で潜水艦を追っていく。そこで、ジェット機に乗った電光オズマと出会ったススムは、彼とともに行動していくうちに、世界征服を企むノバ帝国の存在を知る。オズマとススムは、ノバ帝国の野望を阻止することが出来るのか!?

 アドベンチャーロマンの早すぎた傑作!
 塚盛ススムが出会ったのは謎の人物・電光オズマ。ヘルメットで素性を隠し、戦闘機や戦車を持つ彼と共に世界征服をたくらむノバ帝国と戦うSFアドベンチャーです。60年代前半の初期作品らしい、冒険活劇としての快活な展開が新鮮です。
 登場する少年団のデフォルメとにぎやかさが紙面を盛り上げてくれます。本作はなにより、宇宙戦艦ヤマトが最初に登場した漫画作品として有名です。圧倒される見開きに輝く「YAMATO」の文字。四畳半でもエロティシズムでもない、冒険活劇作家・松本零士を楽しみたい方にはおすすめです。

宇宙戦艦ヤマト

宇宙戦艦ヤマト (1)

宇宙戦艦ヤマト (1)

西暦2199年。地球は外宇宙からの侵略者・ガミラスの遊星爆弾によって滅亡の危機に瀕していた! もはや滅亡を待つだけかと思われた地球人類のもとに、惑星イスカンダルより通信カプセルが届く。カプセルには「放射能除去装置・コスモクリーナーをイスカンダルまでとりにきなさい」というメッセージと、ガミラスの戦艦に対抗できる波動エンジンの設計図が入っていた。設計図をもとに宇宙戦艦ヤマトを完成させた人類は、イスカンダルに向け、今、ヤマトを発進させる!

 アニメと全然違う!? 松本零士の手によるヤマト!
 外宇宙からの侵略者・ガミラスとの戦いと、イスカンダルへの旅を描いたあの超有名作『宇宙戦艦ヤマト』の漫画版です。しかし本作は原作ではなく、最初のテレビシリーズ放映と同時に連載されて描かれた作品であり、著者本人もダイジェスト版だと認めている作品です。
 ページいっぱいに描かれた精密機械群「零士メーター」や、2巻以降の黒ベタの大胆な使い方など、松本零士1としての確かな筆致が残されています。ヤマト以降の『機動戦士ガンダム』などで、後に名を残すことになる安彦良和をはじめ、富野由悠季や金田伊功といった巨匠クリエイターたちが参加したアニメ『宇宙戦艦ヤマト』。本作はまごうことなき松本零士100パーセントの、松本零士自身によるヤマト解釈の一端に触れることができます。

松本零士の世界観に浸る、メカマニアのバイブル

 ファン必見! 松本零士が描くメカを堪能できるメカマニアのバイブルを1作品ご紹介します。

新装版 零士のメカゾーン(毎日新聞出版)

新装版 零士のメカゾーン(毎日新聞出版)

新装版 零士のメカゾーン(毎日新聞出版)

メカ・マニアのバイブルが今、よみがえる。「幼き頃に夢中になった本書。自分のルーツ的な書にもう一度向きあえるのは嬉しい」貞本義行(マンガ家・キャラクターデザイナー)「我が人生を狂わせた最初の一冊なんです」樋口真嗣(映画監督・特技監督) 1978年、79年に刊行され、圧倒的な画力と情報量で読者を驚喜させた幻の名著が、2冊を合本にした新装版で復活したものを電子化! 本書は、戦闘機、戦車、銃など世界各国のメカを迫真のイラストと実体験に基づく文章で徹底ガイドしたイラストコラム集です。「『メカゾーン』は少年の日の夢を実現した仕事」と語る著者のメカへの愛がぎっしり詰まった一冊。巻末にはスペシャルコンテンツとして、「単行本未収録のイラスト作品『マニアックメタルノイド』(「アーマーモデリング」誌に2010〜2011年連載)、本書のための録りおろし著者インタビュー」も収録しました。唯一無二の松本零士ワールドが堪能できる完全保存版です。

 松本零士が描くメカを余すことなく堪能できる一冊!
 1978年と1979年に刊行された戦闘機、戦車、戦艦、銃などを迫真のイラストと実体験に基づく文章で徹底ガイドしたイラストコラム集の合本です。松本零士といえば『宇宙戦艦ヤマト』でのヤマト内部のような、ひしめき合うメーター類からなる綿密なメカニックのリアリティを思い浮かべる方が多いかと思われます。本書はそんな松本零士のいちばん美味しいところだけを集めた宝石箱のような一冊です。
 アナログで描かれているからこその、しなるような砲身の曲線など痺れるかっこよさが詰まった本作。電子で読むことで、より細部に至るまで松本零士の筆致を眺めることが可能になります。漫画家やクリエイターのアイディアコラム集としてもぜひおすすめです。

終わりに

 おすすめの松本零士作品はいかがでしたか? 壮絶な戦場を描いた作品や、妖艶なエロティシズムに溢れた作品まで魅力的な名作ばかりをご紹介しました。
 DMMブックスには、無料で試し読みできる作品や、キャンペーン中の電子書籍がたくさんあります。無料のビューアーとアプリで簡単に読むことができるので、ぜひお試しください!

人気の記事