夢みる少女たちの光と影『淡島百景』完結記念 志村貴子インタビュー

 2011年に太田出版が運営するウェブサイト(現:Ohta Web Comic)で連載開始され、13年の時を経てついに完結した『淡島百景』。今回は完結を記念して、作者の漫画家・志村貴子先生にDMMブックスが独自インタビューを実施! 連載を振り返っての感想から、次作のお話しまで伺いました。
 DMMブックスで発売中の『淡島百景』最終巻の5巻には、DMMブックス限定のショートストーリーを収録! ぜひチェックしてください!

淡島百景 1

淡島百景 1

恋とも友情とも、憧れとも執着とも、嫉妬とも恐れとも、言葉にできない、大切なきもち。舞台に立つことを夢みて歌劇学校に通う少女たちの心を、鮮やかに切り取った青春群像シリーズ。淡島(あわじま)歌劇学校合宿所――通称‘寄宿舎’には、舞台に立つことを夢みる少女たちが全国から集まってくる。ミュージカルスターに憧れて入学した若菜。親友の思いを背負って学び続ける寮長の絹枝。周囲の視線を集める美しき特待生の絵美。かけがえのない季節をともに生きる少女たちの青春グラフィティ。【目次】第1話 田畑若菜と竹原王子第2話 竹原絹枝と上田良子第3話 岡部絵美と小野田幸恵第4話 伊吹桂子と田畑若菜第5話 柏木拓人と吉村さやか【番外編】拓人くんの日常志村貴子まつり リレーマンガ 4

淡島百景 5

淡島百景 5

※DMMブックス限定電子購入特典ショートストーリー「八乙女皐月サマの受難」収録!外から見るほどきれいな世界じゃないそれでも淡島に未来を思いたかった志村貴子が描く、夢みる少女たちの光と影──連載開始から約13年の時をかけて、ついに完結!!!舞台に魅せられた者たちが過去を乗り越え、紡ぐ未来。心震える青春群像シリーズ最終章。美しい祖母の面影を持つ同級生・絵美に、強い憧れを抱いた桂子は、やがてその思いを憎しみへと歪ませ、絵美を孤独に追いやった。深い悔恨を抱えて長い年月を過ごした桂子だが、自らの死を前に、教え子の若菜に告白をする……

『淡島百景』を振り返って

——この度は『淡島百景』完結おめでとうございます。どんな作品に育てたいといった構想などは最初にありましたか。

志村貴子先生(以下、志村):ありがとうございます。当初の予定では「スポットライトを浴びることのできなかった子たち」もしくは「一度は浴びたが挫折してしまった子たち」の負の側面を描こうとしました。

良子が絹枝を内心羨むシーン

(『淡島百景』1巻p48 ©志村貴子/太田出版)

——本作を描く上で大切にしていたことなどあれば教えてください。

志村: モチーフとして参考にしていたものはありますが、あくまで別物であることを常に念頭に置くよう心掛けました。

——作品の終わり方はいつ頃から決めていましたか。

志村: 実は、本来は4巻が最終巻でしたが、私がゴネて5巻までにしてもらったんです。5巻にあたるエピソードを描くにあたって、初心に立ち戻るのが本道であろうと決めました。

——昨年完結した『おとなになっても』との同時連載の期間も長かったと思いますが、同時連載で大変だったことがあれば教えてください。

志村: 同時連載は常に大変ですが『淡島百景』は特にいくつもの作品のしわ寄せを食わせてしまったので大変というより申し訳なさがあります。

読者の声が最終巻の後押しに

——『淡島百景』もさまざまな人物が登場する群像劇ですが、思い入れのあるキャラはいますか。

志村: 伊吹先生の祖母である山路よし子さんと、竹原先輩ですね。竹原先輩は、文化祭でショートヘアにしてからと、トップスターになって「小鳥遊陽」として活躍するようになってからの彼女が特にお気に入りです。 圧倒的な美というイメージでの描写はずっと楽しかったです。

江里が小鳥遊陽に憧れているシーン

(『淡島百景』4巻p44 ©志村貴子/太田出版)

あとは、拓人くんのような子も描けて嬉しかったです。

さやかさんと拓人の会話 男でありながら淡島に憧れる二人

(『淡島百景』1巻p151 ©志村貴子/太田出版)

——お気に入りのシーンやエピソードがあれば教えてください。

志村: 伊吹先生と祖母であるよし子さんのやり取りすべてです。よし子さんはある種、伊吹先生を歪ませてしまった張本人ですが、ああいう人は嫌いではないです。身内には絶対に欲しくない人ですけど……。

高校生の伊吹桂子が自分に厳しい祖母を恨むシーン

(『淡島百景』1巻p117〜p118 ©志村貴子/太田出版)

——読者からの反響はどうでしたか?

志村: やはり、岡部絵美さんのエピソードについて感想をもらうことは多かったですね。最終章を描くにあたって、読者の方の声が執筆の後押しをしてくださったといっても過言ではないと思っています。

孤独感から散りゆく桜に思いをはせる岡部絵美

(『淡島百景』1巻p70 ©志村貴子/太田出版)

——志村先生の作品はさまざまな人物の感情や思いがはっきり描かれつつも、作中の雰囲気には爽やかさがあるように一読者として感じます。

志村: 大変恐縮です。でも描いてる本人は割とドロッとした人間なのでそういう部分は自分を重ねながら、そうでない部分は理想というか憧れを描いてるのだと思います。

トリプル新連載に向けて

——既に次作も決まっており、トリプル連載ということで精力的な活動が引き続き見られるのは読者としてもうれしいです。一方で、「今の作品が終わったら少し休もうかな」などと考えたことはありますか。

志村: 『放浪息子』と『青い花』が終わった時にしばらく休もうと思いましたが、休む間もなく『こいいじ』が始まりました。自転車操業なのでありがたい話ではあります。でも、その後病気になりがちだったので、適度に休むことは大切だなと痛感しました。

志村貴子トリプル新連載スタート!

——次作の中でも『オンリー・トーク』は作画担当ということですが、作画担当として漫画を描く際に工夫していることがあれば教えてください。

志村: 原作の一穂ミチ先生、そして読者の方にかっこいいと思ってもらえたり胸がキュンキュンするような絵や描写をお届けできるようにがんばりたいと思います。

——最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

志村: また色々始めるので追いきれないという方もおられるかと思いますが、どれも面白い作品になってるはずなので出来れば追いかけて読んでもらえると嬉しいです! あと、読者の皆さんも健康には留意してください。

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