代表作『惑星のさみだれ』や『スピリットサークル』で知られる水上悟志が描く妖怪ファンタジーバトル漫画『戦国妖狐』が2024年1月より全3クールでアニメ化されます。これを記念して、水上悟志ファンのDMMブックス書店員がおすすめの作品を6作ピックアップしてご紹介します! 初期の短編集からあの名作、さらにはエッセイまで、漫画ファンの心を掴んで離さない水上ワールドの魅力にぜひ触れてみてください!
目次
SF、ファンタジーの名手水上悟志特集
戦国妖狐(全17巻完結)
時は永禄七年(1564年)。縁あって義姉弟となった、人間好きの妖狐・たまと人間嫌いの人間・迅火(じんか)の二人は、「精霊転化」の力で乱世に蔓延る悪を討伐していきます。彼らの旅路の先には何が待っているのか……。戦国の世に、人間を喰う闇(かたわら)と呼ばれる妖怪と闇を狩る人間がいるなかで、手を取りあう人間と闇の物語。
1巻から6巻が「世直し姉弟編」、7巻から17巻が「千魔混沌編」の二部編成となっており、水上作品のなかでも一番と言ってもいいほど少年漫画らしい作品です。
人と闇の交わりを描いた本作のキーパーソンは、迅火たちが旅の途中で出会う自称浪人・兵頭真介です。真介は情に脆く熱い、最も人間らしい人物。半ば人間離れした迅火の異常性が際立つほど、真介の人間臭さが引き立ちます。作品を通して大きく成長する姿も見どころです。また、迫力のある大ゴマ連発で描かれる圧巻のバトルシーンも魅力の一つで、アニメ化にも期待がかかります。ちなみに、新装版が2023年11月19日より全6巻で発売予定です。
惑星のさみだれ(全10巻完結)
大学生の雨宮夕日は、ある日突然現れた喋るトカゲ・ノイに「世界を滅亡から救うために力を貸してほしい」と頼まれます。断る間もなく獣の騎士団の一員となった夕日は、超能力「掌握領域」を授かりますが、早くも敵に襲われ絶体絶命の危機に。死を意識したその時、少女の拳が敵を打ち砕きます。その少女は、獣の騎士団の姫・朝日奈さみだれでした。彼女と共に敵と戦うことになった夕日ですが、さみだれの真の目的は自らの手で地球を壊すことで……!?
水上悟志の代表作です。全十巻とコンパクトでありながら、後半にかけてどんどん濃密になっていく展開と台詞が熱く心に刺さる作品です。
本作のテーマの一つに「大人と子ども」があります。18歳の大学生である夕日は、社会人からすれば子どもであり、小中学生からすれば大人という絶妙な立ち位置にいます。大人とは何かを大人から学び、大人とは何かを子どもに示す、その葛藤のなかで成長していく姿が描かれています。完結から十年以上経てもなお、根強くファンから愛され続ける名作をぜひお読みださい。
また、本作のその後を描いた読み切り「惑星のさみだれ外伝 第64.5話 太陽と世界」が単話で配信されているので、こちらも要チェックです!(後述する「ギンガサンダー」にも収録されています)
スピリットサークル(全6巻完結)
霊が視えること以外はごく平凡な中学生・桶屋風太は額に傷のある転校生の少女・石神鉱子に一目惚れ(?)をしますが、彼の目には彼女には背後霊・イーストが見えていました。風太はイーストを気にしないようにしながら鉱子に近づこうとしますが、霊が視えていることがバレたことで鉱子の態度は一変。謎の武器「スピリットサークル」を使って、風太に過去生(前世)を見せはじめ……!?
七回の輪廻転生によって深い因縁で結ばれた少年少女のボーイミーツガールです。物語は輪廻転生を軸に展開され、なかでも風太と鉱子の因縁に焦点を当てています。風太は七つの異なる過去生を追体験することになるのですが、それぞれに幸せな死もあれば、憎しみに満ちた死もあり、どの過去生にもヒューマンドラマが詰まっています。二人の前世には何があったのか、そして彼らの運命はどのような結末を迎えるのか。過去・現在・未来が交差する中二・前世・霊能バトル漫画です。
最果てのソルテ
魔法による大戦により”魔法汚染”の被害を受けている世界。孤児として育った少女・ソルテは、魔界の霊宝を持ち帰る「サルベイジャー」のサリエラから、「私の代わりに生きてくれ」という遺言と共にペンダント型の霊宝を託されます。ソルテは霊宝の中に眠っていた小さな妖精・セレンに導かれ、物知りブラック、死にたがりのフィロと最果てを目指し旅に出ます。
2023年11月現在、MAGCOMIで不定期連載中の本作は、水上悟志による初の「ハイファンタジー」として注目を集めています。王道の冒険物語でありながら、ひと捻りのある設定が特徴です。興味深いのは、物語がループし二回目の冒険であることを知っているのが主人公のソルテではなく妖精・セレンである点や、2巻で明かされる他のキャラクターの過去にもアイデアが詰め込まれている点です。これからの展開に目が離せません。注目の3巻は2023年12月8日発売予定です。
水上悟志短編集シリーズ
『げこげこ 水上悟志短編集』には、水上悟志のデビュー作「弥一郎」や、新人時代に自己最高作と評していた「げこげこ」などが収録されています。水上作品の一部には、共有された世界観や設定、そして同一キャラクターが登場するなど、多彩なつながりを持つものがあります。
それが顕著に現れているのが『宇宙大帝ギンガサンダーの冒険 水上悟志短編集 vol.3』です。各話が独立した短編集でありながら、全話を通して一つの大きな物語となる構成には驚嘆します。さらに、作品同士の関連性を示した相関図が載っているので、つながりを意識しながら再読する楽しみ方もできます。
水上悟志のまんが左道(全1巻完結)
初投稿から 『惑星のさみだれ』連載開始までの漫画家半生の自伝的エッセイであると同時に、水上流の漫画指南書としても読めます。裏話も多く描かれており、押切蓮介、清野とおる、緒方ていなど、漫画ファンならニヤリとしてしまうメンバーの名前が登場します。なかでも印象的なエピソードは、石黒正数の短編作品「ヒーロー」を読み、読み切りの描き方がわかったという話と、その後アワーズのパーティーではじめて本人に出会い「あんたはおれのライバルだ!! 」と啖呵を切る話です。漫画創作への実践的なアプローチ方法から、具体的な印税の金額に至るまで赤裸々に描かれているため、水上悟志ファンはもちろん、漫画家志望者にとっても必見の一冊です。
終わりに
どくしょ部員が考える水上悟志の魅力は2つあります。一つ目は、適度な場面転換や時間経過を用いて、物語のボリューム感を出す構成力です。二つ目は、メリハリを出すために大きさまで意識したコマ割りと、コマ内でのアングルやカメラワークによる演出力です。今回紹介した作品は、それらがいかんなく発揮された名作ばかりです。
それ以外にも、隠れた名作『サイコスタッフ』や、水上SF金字塔の「虚無をゆく」が収録されている『水上悟志短編集「放浪世界」』など、多彩な作品が存在します。水上ワールドは広く、入口が多いです。いきなりどっぷり浸かりたい方は長編を、まずは作風を知りたい方は短編を読み、その魅力に触れてみることをおすすめします。
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