年間1,000作品近く漫画を読んでいるDMMブックスの書店員が、独断と偏見に基づいて作品をレコメンドする「DMMブックスどくしょ部おすすめ特集」シリーズ第14弾。今回はさまざまな漫画家の短編が収録された「アンソロジー漫画」をご紹介します。知らない作家を読んでみたいという方、名前は知っているけど読んだことはないという方、アンソロジーは、あなたの「好き」を見つける可能性の宝庫です。十人十色の短編の数々をお楽しみください。(文責:書店員H)
目次
プロ漫画家の原点が楽しめる作品
アフタヌーン四季賞CHRONICLE 1987-2000(全4巻完結)

アフタヌーン四季賞CHRONICLE 1987-2000 1
現在プロとして活躍する漫画家が、まだ新人の頃、四季賞に応募・入選した作品を大量収録した、漫画界において類を見ない圧倒的BOXセット「アフタヌーン四季賞CHRONICLE 1987-2000」。その中から作品をピックアップし、春・夏・秋・冬それぞれ‘Selection’として電子コミック版で復活!!春Selectionには高橋ツトム/須藤真澄/ヒロモト森一/榎本俊二/王欣太を収録!
漫画雑誌『月刊アフタヌーン』(講談社)が主催している、新人漫画賞「アフタヌーン四季賞」は、これまでに数多くの有名作家を輩出してきた権威ある新人漫画賞。近年では『青野くんに触りたいから死にたい』の椎名うみ(2013年)や、『Thisコミュニケーション』の六内円(2018年)も四季賞を受賞しています。
本作は1987年から2000年までの受賞作の一部をまとめた作品集です。さて、気になる収録作家は、榎本俊二、王欣太、沙村広明、五十嵐大介、芦奈野ひとし、木尾士目、弐瓶勉、鬼頭莫宏、真鍋昌平、漆原友紀(順不同)など、漫画好きにはたまらない顔ぶれですね!
受賞から連載まで狭き門をくぐり抜け、今もなお活躍している漫画家たちの原点をお楽しみください。
豪華漫画家陣が手掛ける長嶋有小説コミカライズ作品
長嶋有漫画化計画
『猛スピードで母は』で第126回芥川賞を受賞し、ブルボン小林の名義でコラムニストとしても活動している長嶋有の小説を、萩尾望都、吉田戦車など豪華漫画家陣がコミカライズした作品集です。
本シリーズは、長嶋有が自ら企画を立ち上げて漫画家に依頼し、編集者として打ち合わせをしながら作品を作り上げるという、類を見ない方法で制作されています。漫画以外にも各作品の解説や制作における経緯や裏話が描かれたコラムが入っているなど、長嶋有の漫画愛がとても感じられる内容です。ちなみに、電子版だと長嶋有が当時を振り返ったあとがきが収録されています。
また、本作の第二弾が2023年11月22日に『いろんな私が本当の私』のタイトルで発売されます。雁須磨子、コナリミサト、丹羽庭、鶴谷香央理、三本阪奈、米代恭の6人の女性漫画家たちによる作品が収録予定。新作も要チェックです。
「戦争」をテーマにさまざまな視点で描かれた作品
戦争×漫画 1970-2020(全1巻完結)
戦中世代、戦後世代の漫画家20人による「戦争」をテーマにしたアンソロジー。『ビッグコミックオリジナル 戦後70周年増刊号』(小学館)を底本に、新たに作品を追加し再編集した増補愛蔵版です。「戦争」がそれぞれの視点から多彩な表現で綴られており、扱うテーマが同じなだけに、各々の作家性がより鮮明に見えてきます。
たとえば、水木しげるの「人間玉」は、太平洋戦争時に自らが体験したと思われる、ぎゅうぎゅう詰めの輸送船での出来事がユーモラスに描かれています。
また、石坂啓の「さよなら憲ちゃん」は、優しくて穏やかな憲を夫に持つ丸子が刺激的な男と不倫関係に陥り離婚するものの、新しい夫婦生活はうまくいかず、以前の平和な生活の大切さに気が付くお話です。一見戦争とは関係ない物語に思えますが、憲法9条への改正議論が比喩表現を使って描かれています。
その他、半世紀にわたって『戦場まんがシリーズ』を描き続けた松本零士をはじめ、浅野いにお、さそうあきら、花輪和一、高橋しん、いましろたかし、石坂啓など、豪華漫画家陣が参加。さらに角田光代の書き下ろしや、横尾忠則、いとうせいこう、片岡義男など、他分野の著名人の寄稿も収録されています。「戦争」と聞くと身構えてしまう方もいるかと思いますが、多くの漫画家の作品が読める1冊として肩の力を抜いて読んでみてください。
終わりに
アンソロジーは、短編なので隙間時間に一話ずつ読むことができ、新たな作家を知る出会いの場にもなります。もっといろいろな作家を読んでみたいという方は、筒井康隆作品のコミカライズ集『筒井漫画涜本』や、100人を超える漫画家がコロナ禍の日常を描いた『MANGA Day to Day』などもおすすめです。ぜひチェックしてみてください!
DMMブックスには、無料で試し読みできる作品や、キャンペーン中の電子書籍がたくさんあります。無料のビューアーとアプリで簡単に読むことができるので、ぜひお試しください!
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日本文学界が生んだ鬼才・筒井康隆の作品群を、17名の漫画家がそれぞれの感性でコミカライズした驚異のアンソロジー!日本SF黎明期を支え、今や正真正銘、日本文学界の大スターとなった筒井康隆。その傑作・怪作の数々が、執筆陣の独自解釈による、衝撃のコミック作品として、再降臨!SF、スラップスティック、不条理……広大無辺・予測不能のツツイワールドが、今ここに!!【収録作品】相原コージ「死にかた」吾妻ひでお「池猫」いしいひさいち「大富豪刑事」内田春菊「ムロジェクに感謝」蛭子能収「傷ついたのは誰の心」加藤礼次朗「TROUBLE」喜国雅彦「鏡と薬と正義と女」けらえいこ「妻四態」三条友美「亭主調理法」清水ミチコ「傾斜」しりあがり寿「樹木 法廷に立つ」とり・みき「我が良き狼」ふくやまけいこ「かいじゅうゴミイ」まつざきあけみ「イチゴの日」南伸坊「禁花」矢萩貴子「セクション」山浦章「星は生きている」さらに巻末には、原作者である筒井自身が執筆した短編漫画「アフリカの血」も特別収録!!

100人超の著名漫画家が集いコロナ禍の’日常’を描いた後世へ届ける奇跡のマンガたち。昨年6月から「コミックDAYS」と公式Twitterに掲載され大きな話題を呼んだリレー連載企画「MANGA Day to Day」。2020年4月以降の日本を舞台に描かれた109組の漫画家たちによる珠玉の作品、ついに書籍化!収録作家(50音順)青木U平 麻生みこ あずまよしお 雨隠ギド あやめゴン太 蟻子 安堂ミキオ意志強ナツ子 石川聖 井上とさず 今井ユウ 海野つなみ 絵津鼓 大瑛ユキオ丘上あい 加曽利りあら 木下いたる 熊倉隆敏 桑原太矩 白乃雪 すえのぶけいこスズキスズヒロ 関口かんこ 太陽まりい 高橋愛 ちばてつや ツジトモ 土田えり豊田徹也 永田狐子 ナタでココ ナナトエリ・亀山聡 のまり ひうらさとる弘兼憲史 藤緒あい 藤村緋二 冬川智子 町子 松本ひで吉 真夏日ずる三ヶ嶋犬太朗 むこうやまあつし 茂木清香 百井一途 森もり子/トミムラコタ櫓刃鉄火 柳内大樹 山田デイジー 山田ヒツジ 山田金鉄 慎結 ゆうち巳くみゆづか正成 よしもとよしとも ろびこ(上巻は4月1日〜5月21日までの56作を収録)
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