2023年9月22日より、DMM TVのオリジナルドラマ第1弾『ケンシロウによろしく』が配信されます。主演・松田龍平、ヒロイン・西野七瀬、脚本をバカリズムが担当など豪華な布陣での実写化が実現しました。今回はドラマ化を記念し、作者のジャスミン・ギュ先生に独自インタビューを実施。ドラマのお話や、もうすぐクライマックスを迎える漫画のお話までたっぷりお伺いしました!
実写ドラマについて—「バカリズムさんならおもしろくしてくれると確信しています」
ーー『ケンシロウによろしく』の実写ドラマ化おめでとうございます! 決まったときはどのようなお気持ちでしたか?
ありがとうございます。決まったときは単純にとてもうれしかったです。実は、メディア化の話って、提案がきてもそのまま企画が流れてしまうことが多いんです。本当に決定するまでは不安でしたが、正式に決まったと聞いたときはほっとしました。しかも、尊敬しているバカリズムさんが脚本を担当してくださることになって、本当にうれしかったです。
ーー元々バカリズムさんのファンだったんですか?
はい、漫画家デビューする前からずっとファンでした。
ーー『ケンシロウによろしく』の6巻の1コマにもバカリズムさんが登場していましたね。
あれはテレビ番組『アメトーーク!』と『ヤングマガジン』(以下、ヤンマガ)のコラボ企画でしたね。ヤンマガの漫画に『アメトーーク!』の出演芸人を登場させる企画(ヤンマガ2022年15号)で、『ケンシロウによろしく』では、バカリズムさんを登場させました。

ーー今回、バカリズムさんの脚本に何か要望などはなかったのでしょうか?
ありませんでした。バカリズムさんなら何をやってもおもしろくしてくれると確信しています。漫画のおもしろさと映像のおもしろさは違うと思うので、むしろいろいろ変えてほしいと思っていました。映像のプロとして、変えた方がいいところはぜひ変えてほしいです。
ーーキャストに関して、初めて聞いたときの印象はどうでしたか?
主役の沼倉孝一を演じる松田龍平さんも昔から好きな役者さんで、沼倉の落ち着いた雰囲気と合っているなと思いました。ヒロインの西野七瀬さんやほかのキャストさんも、それぞれの役柄のイメージにぴったりだと思いましたね。
ーー撮影現場は見学されましたか?
はい、沼倉マッサージ店とテレビ番組「モミの鉄人」の撮影現場を見学しました。セットが細かいところまで作り込まれていてびっくりしました。沼倉マッサージ店に置かれている本などの小物も一つひとつ精巧に作られていて、記念に持って帰りたいと思ったぐらいリアルな仕上がりでした。
また、原作にはないんですが、沼倉マッサージ店の待合室の隣にトレーニングマシンが置いてあって、これ漫画でも描いておけばよかったって思いましたね。
ーードラマはまだご覧になっていないとのことですが、期待されているポイントはありますか?
落ち着いた感じでバカバカしいせりふを話す松田さんが早く見たいですね。それに対して、西野さんがどう突っ込むのかも楽しみです。そして漫画の絵では描きやすくても、映像にするには難しそうな場面も多々あるので、それを監督や役者さんやCGスタッフの方々の力でどう演出してくださっているのかが楽しみです。
『ケンシロウによろしく』制作秘話
ーー前作の『Back Street Girls』と同様、『ケンシロウによろしく』も振り切った斬新な設定がおもしろい作品です。物語の設定やストーリー展開など、アイデア出しはどのように行われたのでしょうか?
『ケンシロウによろしく』は、最初『深夜食堂』のマッサージ版をイメージした、泣けるヒューマンストーリーにしようと思っていました。ただ、やはりギャグ漫画家の職業病で、ギャグを入れないと「これおもしろいかな?」って不安になるんですよね。
それで何かぶっ飛んだ設定を入れようと思い、「ツボ」つながりで『北斗の拳』のオマージュを組み入れました。そうしたら、完全にギャグ漫画になってしまいました(笑)。
ーーギャグ漫画ですが感動できるエピソードもたくさんありますよね?
細かい部分はギャグですけど、大きな軸はヒューマンドラマです。沼倉は常識があるとは言えない男ですけど、やっていることは人助けなので、マッサージを受けた人は基本的にみんな幸せになるんですよね。読んだ人も幸せになってくれたらいいなと思って描いています。
ーーテーマとしてマッサージを選んだ理由は何ですか?
私自身マッサージが好きなんです。健全なマッサージ漫画ってあんまり見たことないので、軽い気持ちで始めました。
でも「どんな漫画を描いているの?」って聞かれて「マッサージの漫画を描いています」って答えると「エロいやつですか?」って聞かれることもあります(笑)。真面目なマッサージ漫画なんですけどね。
ーーマッサージはかなり本格的に描かれていますよね?
連載前にはマッサージ店へ取材に行って、実際に施術を受けたり、施術されている担当編集さんを見たりしましたね。あとは沼倉みたいにツボとかマッサージの本もたくさん読みました。
でも『北斗の拳』はあまり読み返しませんでした。読んでしまうと、ついマニアックなネタを入れたくなってしまうので我慢してたんです。『北斗の拳』を読んだことのない読者にも楽しんでもらえるようにしようと思っていたので。
ーー思い入れのあるキャラクターはいらっしゃいますか?
漫画家を登場させたときは描きやすかったですね。ほかの職業だと遠慮してあまりひどい目にあわせるようなことは描けないんですが、漫画家ならボロボロにしてもいいかと(笑)。実際、自分も体調を崩したりしたことはあったので、沼倉にどうしてもらいたいか想像しながらエピソードを作ったんですが、まさか最終的にあんなことになるとは思っていませんでした。
ーー最新の7巻では、前作『Back Street Girls』の「ゴクドルズ」が登場しましたね。
最初はアイドルのお客さんを登場させたいと思っていたんですけど、普通のアイドルだとストーリーが思いつきませんでした。そこで担当さんが「「ゴクドルズ」を出してみたら?」と提案してくれました。
登場する回(第71話)には『Back Street Girls』の1話とまったく同じ場面を新たに描き直して載せてみたんですけど、そういったパターンはこれまでになかったので、試せてよかったと思いましたね。
ーー物語では「アイドルだけど実は男」というポイントが生かされていましたね。ファンの反応はいかがでしたか?
読者からどんな反応が来るかドキドキしていましたが、「「ゴクドルズ」が登場してうれしい」といった好意的な反応が多くて安心しました。沼倉のすごさを見せるために、体を触っただけで男だと気づく展開が作れたので、前作の設定がうまく生かせたと思います。

クライマックスにむけて
ーー7巻の最後は、『北斗の拳』の世界に転生するような引きになっていて、続きがとても気になりました。今後はどのような展開になるのでしょうか?
いつも単行本の最後の話では読者をびっくりさせようと思ってオチを考えています。異世界の展開からいい感じにつながっているので楽しみにしていてください。
ーーどのような終わり方をするのか気になります。
『ケンシロウによろしく』は、もうクライマックスに突入しています。オチのアイデアは漫画を描きながらいくつか考えていました。復讐相手のヤクザ・木村が死んだオチ、異世界のオチ、あとまだ描いていない最後のオチです。でも、描いているうちにどれも描きたくなって、結局全部描いちゃいましたね。
ーー『ケンシロウによろしく』がどんな結末を迎えるか大変楽しみです。次回作のネタは考えられていますか?
次はスケールが大きな話を書きたくて、とても大きな地球規模の物語を考えています(笑)。そのネタが採用されるかはわかりませんが、ギャグ半分、シリアス半分を想定しています。また『ケンシロウによろしく』と同じパターンになるのは怖いので、次はギャグは少なめにしようかと……。
ーーギャグ要素が少なめというのは意外ですね。
実は、週刊連載で毎週ギャグを描くのは本当に辛いんです(笑)。
特に『ケンシロウによろしく』のような特殊な設定だと、リアルに見せるためには描けることが限られていて……。でも、やっぱり描いていて楽しい作業ではあるので、必ずギャグ要素は入れたいです。
ーーツボやマッサージは医療にも関わるので、そこも大変そうですね。
『ケンシロウによろしく』で沼倉のところにやってくる人たちは、「病院には行けないけどマッサージ店には行きたい」という設定にしないといけないことが多くて、そこが一番ネタ作りで難しいところでしたね。重すぎる症状にしてしまったら、「これ普通は病院行くよね?」ってケースがほとんどで……。
ーー沼倉が「病院に行け」って言うオチのお話もありましたよね(笑)。
普通誰でも言いますよね(笑)。マッサージ専門知識を勉強しながら、いろんな展開のパターンを考えることに頭を悩ませました。
大変な分、つらさが勝ってしまうときもありましたが、「これいけるかな? 現実的にどうかな?」ってギリギリのラインを探っていくときなどは、やはり描いていて楽しいです。

ーー最後に読者の方へメッセージをお願いします!
いよいよ『ケンシロウによろしく』もクライマックスに入りました。これまでの沼倉の人生は壮絶なものでしたけど、ここからさらに壮絶な人生が待っているので、最後のオチを楽しみにしていてください! ドラマの方もぜひ見ていただけたらと思います。
