スタジオジブリは、宮崎駿によるアニメーションを中心に魅力あふれるキャラクターや素晴らしい音楽を用いた名作を世に出し、老若男女問わずさまざまな世代を魅了しています。そんなスタジオジブリ作品には、実は原作がある作品も多くあるんですよ。
そこで今回は、スタジオジブリ作品の原作漫画・小説を11作品ご紹介します。映画版との違いや、原作ならではの魅力などを詳しく解説するので、ぜひ映画とあわせてお楽しみください！
目次
ジブリ作品の原作漫画4選
ジブリ作品の原作になった漫画を4作品ご紹介。「この作品に原作漫画があったんだ！」と驚く方も多いかもしれません。
『おもひでぽろぽろ』／『おもひでぽろぽろ』
ノスタルジックな雰囲気がじんわり胸ににじむ作品です。
小学五年生の少女・タエ子。国語は好きで算数は苦手。少しわがままで、普段は明るい女の子のごく普通の日常が描かれています。
10歳のタエ子が日常生活の中に潜む、喜びや悲しみ、ちょっとしたトラブルや恥ずかしい出来事を、少しずつ経験していく様子が綴られています。なお、映画版では27歳のタエ子が登場しますが、原作では描かれておらず映画オリジナルです。
映画版で見るタエ子の背景を、原作漫画でのぞいてみてはいかがでしょうか？
『耳をすませば』（全1巻完結）／『耳をすませば』
本を介して出会った少年少女の恋物語。
本を読むことが大好きな主人公・月島雫は、ある日図書館の貸し出しカードで天沢聖司という名前をよく見ることに気づきます。正体を探り、ようやく本人に出会えましたが、聖司はイヤなヤツで……。
甘酸っぱい恋愛や、恋心を取り巻く葛藤が描かれた恋愛漫画。おおまかな展開はほとんど変わらないものの、聖司や猫のビジュアルが違ったりと、キャラクターの細かな設定に違いがあることで、原作・映画版とそれぞれの解釈で作品を楽しむことができます。
『バロン〜猫の男爵』（全2巻完結）／『猫の恩返し』
映画化された名作！「星の瞳のシルエット」柊あおいが贈る癒し度サイコーの冒険ファンタジー！！ハルは一匹のネコを助けた。猫は恩返しがしたいようだけど、その恩返しはあんまり嬉しくないというか、困ったことに！？第1巻。※このコミックスは、旧『バロン〜猫の男爵（全1巻）』を分冊して再編集したものです。第1巻の収録内容は、旧『バロン〜猫の男爵（全1巻）』の前半と巻末付録まんが「ひろみちゃん」が含まれております。
『耳をすませば』の作者・柊あおいがおくる冒険ファンタジー作品。
下校中トラックに引かれそうになっていた猫を助けた主人公の吉岡晴。今度お礼をしますと猫が言った通り、恩返しが始まりますが困った内容のものばかりで！？
『耳をすませば』に出てきたバロンが活躍する、スピンオフのような作品です。あわせて読むことでバロンの設定や、映画では明かされることのなかった猫の国の秘密についても知ることが出来ます。二作品一気読みして、柊あおいの世界観に浸ってみるのもおすすめです！
『コクリコ坂から』（全1巻完結）／『コクリコ坂から』
主人公の小松崎海は、港町で暮らす高校生。ある日、新聞部の風間俊が学校3階の窓から飛び降りる場面に遭遇します。以降、新聞部が起こす騒ぎに巻き込まれ二人は少しずつ近づき、付き合うことに。しかし、海と俊が異母兄妹という疑惑が生まれて……。
映画版は、戦争や建物の保護運動などを取り入れたりと、『コクリコ坂から』が連載された当時の時代を感じられるような作品に仕上がっています。一方、原作では海と俊の恋愛模様がメイン。映画版のしっかり者の海と違い、活発で強気に描かれているので、映画版とは異なる読後感が味わえます。
ジブリ作品の原作小説7選
ジブリ作品の原作となった小説や漫画を7作品ご紹介。昭和の文豪の名短編や、イギリスのファンタジー作家による名作などをピックアップしました。
『アメリカひじき・火垂るの墓』／『火垂るの墓』
昭和20年9月21日、神戸・三宮駅構内で浮浪児の清太が死んだ。シラミだらけの腹巻きの中にあったドロップの缶。その缶を駅員が暗がりに投げると、栄養失調で死んだ4歳の妹、節子の白い骨がころげ、蛍があわただしく飛び交った……戦後どれだけの時間が過ぎようと、読む度に胸が締め付けられる永遠の名作『火垂るの墓』をはじめ全6編を収載。
わずか20ページという短さながらも、今もなお多くの人々の心を揺さぶる作品です。
4歳の妹・節子と14歳の兄・清太は戦争で両親を亡くしてしまいます。親戚の家に身を寄せますが、なじめなかった二人は出ていくことを決意。小さな塹壕でひっそりと暮らしていきますが、節子は栄養失調により命を落とし、清太も別の場所で息絶えます。
作者・野坂昭如の実話をもとに、戦争のむごたらしさと、その最中を生きた子どもの物語が描かれています。映画版は小説の内容と基本的に変わりなく、忠実に再現されています。淡々と語られる文章から、より悲惨さが伝わります。
『新装版 魔女の宅急便』／『魔女の宅急便』
ひとり立ちするために初めての街にやってきた13歳の魔女キキが、新しい街で始めた商売宅急便屋さん。相棒の黒猫ジジと喜び哀しみをともにしながら街の人たちに受け入れられるようになるまでの1年を描く。
13歳の魔女・キキが、黒猫のジジとともに、ひとり立ちのために奮闘するストーリー。空飛ぶホウキで宅急便の仕事をしながら、さまざまな出会いを通して成長していきます。ひたむきな少女の姿に勇気をもらえます。
実は映画のラスト、飛行船から落ちそうになったトンボをキキがホウキにのって助ける救出劇は、映画オリジナルシーン。原作では、キキとトンボとの恋が結ばれ結婚するところまで描かれていたりと、映画とは違う細かな設定は他にもあります。映画では描かれなかった、キキの成長が気になる方にもおすすめです。
『海がきこえる〈新装版〉』／『海がきこえる』
天才YA作家 氷室冴子 デビュー45周年激しくも切ない「90’s青春グラフィティ」「あたし、高知に行くまでは世間とうまくやってるいい子だったのよ。あれからずっと世間とずれっぱなしの感じがする」大学進学で上京した杜崎拓は「ある事件」で疎遠になった高校時代の転校生・武藤里伽子が、地元大学への進学を蹴り東京に舞い戻った事を知る。気まぐれな美少女に翻弄されながら、その孤独に耳を澄ました短い日々を回想する拓に、思いもかけない再会の機会が訪れる。スタジオジブリの長編アニメーション「海がきこえる」の原作。キャラクターデザイン近藤勝也氏のカラーイラストを34点収録。トクマの特選！イラスト 近藤勝也〈目次〉第一章 フェアウェルがいっぱい第二章 マン第三章 里伽子第四章 里伽子ふたたび第五章 やさしい夜第六章 海がきこえるあとがき解説 酒井若菜
思春期の恋愛と友情、繊細な心理を描いた恋愛譚。
東京の大学に進学した主人公・杜崎拓が、高校時代のことをふり返ります。東京高校2年の時に転校してきた武藤里伽子と、彼女に恋心を抱く親友の松野豊。そんな豊の思いを知りながらも、里伽子へ良い印象を持っていなかった拓。しかし、あることをきっかけに二人は少しずつ惹かれ合っていきます。
互いの境遇と価値観によってすれ違うことになった過去の恋模様が、みずみずしく表現されています。リアルな心理描写に寄り添った恋愛小説が好きな方に、おすすめの作品です。
『ハウルの動く城』／『ハウルの動く城』
魔法が本当に存在する国で暮らす18歳のソフィーは、「荒地の魔女」に呪いをかけられ、老婆に変身してしまった。家を出て、悪名高い魔法使いハウルの動く城に、掃除婦として住み込んだソフィーは、暖炉に住む火の悪魔と仲よくなる。やがて、ハウルもまた「荒地の魔女」に追われていると知ったソフィーは…？ 英国のファンタジーの女王ダイアナ・ウィン・ジョーンズの代表作。スタジオジブリのアニメーション映画「ハウルの動く城」原作。【解説】荻原規子
荒地の魔女にかけられた呪いによっておばあさんの姿になってしまった主人公・ソフィー。呪いを解くために、ハウルの動く城に住むことになります。
原作者は、ファンタジー小説の名手ダイアナ・ウィン・ジョーンズ。映画版と原作では人間関係や設定の異なる部分が多く、ストーリー展開も変わってきます。原作を読んでみて意味がわかる映画版のセリフもあったり、映画版では明かされなかった設定も描かれていたり……。魅力的な青年として人気の高いハウルも、原作ではソフィーとけんかばかりしています。
ぜひ原作を読んで、映画版『ハウルの動く城』に隠れた秘密を探してみてください。
『風立ちぬ・美しい村』／『風立ちぬ』
作者・堀辰雄の実話をもとに、以前は不治の病とされていた結核に冒された妻・節子と自身のサナトリウムでの療養生活が綴られています。
情景描写が美しく、病気というテーマを扱っていながらじんわりとした明るさが見える本作。互いを思い合いながら穏やかに過ごす二人を通して、日常に潜む幸福を感じられます。
なお、映画版はこの小説をもとにしつつも、零戦の主任設計技師・堀越二郎の要素を主人公に盛りこむことで、オリジナルストーリーを生み出しています。こちらもあわせてお楽しみください。
日本人がもし一部の人の言うような模倣と小細工のみに長けた民族であったなら、あの「零戦」は生まれえなかった。独特の考え方、哲学のもとに設計された「日本人の血の通った飛行機」それが零戦であった。本書は零戦のチーフデザイナー（主任設計技師）が、アイデアから完成までの過程を克明に綴った技術開発成功の物語である。
『竹取物語』／ 『かぐや姫の物語』
輝く竹の中から見つけ出された少女・かぐや姫。身分の高い5人の男性と、さらには帝からの求婚も断ります。育ててくれたおじいさんに月から来たことを打ち明け、迎えと共に帰ってしまうという昔話は、多くの人が知っているのではないでしょうか。
本書は、最も古い「SF作品」とも言われる『竹取物語』を、1998年に日本SF大賞特別賞を受賞した星新一が現代語訳に挑んだ一冊です。軽快な文章と、各章ごとに添えられた「ひと息」もあって、より読みやすくなっています。なじみ深い『竹取物語』をまた新たな視点から読んでみたい方にもおすすめです。
高畑勲がなぜ『竹取物語』を選んだのか、高畑勲エッセイ『アニメーション、折りにふれて』に描かれているので、こちらもご覧ください！
多くの人に惜しまれつつ二〇一八年にこの世を去ったアニメーション監督・高畑勲。『太陽の王子ホルスの大冒険』から『かぐや姫の物語』にいたるまでの自らの仕事や、影響を受けた人々や作品、苦楽をともにした仲間たちについて縦横に語り、綴ったエッセイをまとめる。巨匠の人間像に幅広く迫る生前最後のエッセイ集。（解説=片渕須直）
『君たちはどう生きるか』／ 『君たちはどう生きるか』
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。「どう生きていこうか」と考えたり、「どう生きていくのが正しいだろうか」と考えるのは、人間である証です。今の時代にこそ読んでもらいたい名著が児童向け文庫で登場！
1937年に発売された、吉野源三郎による小説です。聡明な主人公の少年・通称「コペル君」と、彼にこのあだ名をつけた「おじさん」との交流が描かれています。表題通り「人間はどう生きるべきか」を問いかけられるような、深い哲学を感じる作品です。
ジブリ映画『君たちはどう生きるか』とは異なる内容であり、宮崎駿監督は映画制作中に受けたインタビューで、この本が「主人公にとって大きな意味を持つ」と語っています。それを踏まえて小説を読むと、また違った視点で映画を深掘りできるかもしれませんよ。2017年に発売され大きな話題を呼んだ『漫画 君たちはどう生きるか』もおすすめです！
『漫画 君たちはどう生きるか』はこちら！
人間としてあるべき姿を求め続けるコペル君とおじさんの物語。出版後80年経った今も輝き続ける歴史的名著が、初のマンガ化！1937年に出版されて以来、数多くの人に読み継がれてきた、吉野源三郎さんの名作「君たちはどう生きるか」。人間としてどう生きればいいのか、楽しく読んでいるうちに自然と考えるように書かれた本書は、子供はもちろん多くの大人たちにも共感をもって迎えられてきました。勇気、いじめ、貧困、格差、教養、、、昔も今も変わらない人生のテーマに真摯に向き合う主人公のコペル君と叔父さん。二人の姿勢には、生き方の指針となる言葉が数多く示されています。そんな時代を超えた名著が、原作の良さをそのままに、マンガの形で、今に蘇りました。初めて読む人はもちろん、何度か読んだことのある人も、一度手にとって、人生を見つめ直すきっかけにしてほしい一冊です。
終わりに
スタジオジブリ作品では、原作を大きくアレンジすることは珍しくないのがわかります。映画版では描かれなかった登場人物の「その後」や、原作にしか描かれていない設定・展開も多いです。原作と映画を比較することで、それぞれの違いを知り、作品をさらに深く知る手がかりにもなります。ぜひ、お好きなジブリ作品の原作を読んでみてください。
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