6月26日、ワニブックスから『裏のヴィランさん』が発売されました。単行本発売を記念して、今回はDMMブックスどくしょ部による、作者・Ko-daiさんへの独自インタビューを実施 ! 『裏のヴィランさん』の担当編集・Aさんも交え、『裏のヴィランさん』が生まれた経緯やKo-daiさんの創作遍歴、漫画を描く上で意識しているポイントなどさまざまな観点で深掘りしました。

裏のヴィランさん 1巻 <電子版限定特典付き>【DMM限定特典付き】
【電子限定!描き下ろし1ページ漫画収録】アパートの裏に引っ越して来たのは、あざとさMAXのちょっと怪しいオニイサン、もしかして’ウラ’の顔を持っている!?繊細で美麗なタッチで人気の漫画家・Ko-daiが描くヴィランたちの日常コメディ。困った人を放っておけない、バカが付くほどお人好しな青年・元木兆太郎(もときじょうたろう)。ある夜、アパートの裏側からの物音で目が覚め様子を見ると、仲良しのお婆さんが住む家の庭で、土を掘り返す複数の人影があった。翌日、お婆さんの姿は見えず、そこには知らない青年の姿が……。真っ赤なフリルシャツを着こなすその青年はウラノと名乗り、重そうな荷物を家に運び込もうとしていた。引っ越しを手伝う兆太郎に、お礼としてパック酒を爽やかに渡したり、料理をする包丁捌きが謎に怖かったり、仕事の同僚(?)が井戸から登場したり、全身アーマーのペット(?)がいたり……。ちょっと普通とは違うウラノに戸惑いつつ、放っておけない兆太郎だが――。お人好しな青年・兆太郎、そして何やらワケありなウラノさんとその仲間たち。裏に住むウラノさんの’裏’の顔とは? 兆太郎との奇妙なご近所付き合いが始まる。【DMM限定特典付き】
目次
イケメンの「ギャップ」と「あざとさ」

——『裏のヴィランさん』の単行本発売、おめでとうございます。
本作はウラノさんをはじめとするミステリアスなキャラクターが、何気ない日常生活を送っていくところのギャップが読者の心をつかむ作品です。
本作はどのように生まれてきたのでしょうか?
Ko-daiさん:
最初は編集のAさんから受けた、「イケメンのギャップが見たい」という要望でした。
編集Aさん:
以前からイケメンを描かせるならKo-daiさんしかいないと思っていて。そのなかでも、「イケメンにも抜けたところがある」「クールなキャラクターにも日常があるはずだよね」というギャップがあるといいなという話から企画がスタートしました。
Ko-daiさん:
色々なギャップの模索をはじめたのですが、前作(『そのヲタク、元殺し屋。』)と被らないよう意識したこともあって、最初の頃はなかなか進みませんでした。
でもあるとき、「スーツを書きたい」と強く思ったんです。そのキャラが今いる場所には全然似つかわしくないような、派手なスーツを着ているキャラクターがかっこいいのでは、と。また、「あざとくしたい」とも考えました。
編集Aさん:
Ko-daiさんはスーツを書くのがすごく好きな方なので、最初はよくスーツ談義をしていました。「あざとい」の定義や「ヴィラン」とは何かでも結構話しあいましたよね。
Ko-daiさん:
僕は見た目から考えるタイプなのですが、「ヴィラン」という要素が加わったことで、キャラクターがぐっとつかみやすくなりました。
——今回の作品で一番最初に決まったキャラクターは誰になりますか?
Ko-daiさん:
ウラノさんです。デザインやキャラクター性は彼から決まりました。
ただ、目つきや髪型、顔の輪郭などは、企画段階からかなり変わっています。最初はもっと男らしかったんです。髪の色も最初は白ではなく赤で、赤髪に赤スーツの予定でしたが、「赤すぎない!?」ということで没になりました。
編集Aさん:
Ko-daiさんは普段からすごくオシャレなんですよ。
——今回お目にかかったとき、「すごく華やかな方がいらっしゃった……!」とびっくりしました。
Ko-daiさん:
月に1回のお出かけタイムなので(笑)。
——キャラクターの衣装などは調べて描いているんですか?
Ko-daiさん:
参考になる画像を調べたり、家にある『QUOTATION』などのファッション誌を読んだりしています。
編集Aさん:
ウラノさんは毎回つけているピアスが違うんです。服も結構違っていて、そこまでやるのはすごいなと。大変じゃないですか?
Ko-daiさん:
「面倒くさい衣装にしちゃったな」とは思っていました(笑)。
兆太郎も今後色々描こうと思っています。パツパツのワイシャツを着ている姿とか、汗を描いてワイシャツ着てる兆太郎を描きたいですね。
「怖さ」の表現の仕方は、キャラクターそれぞれで変えていきたい
——ウラノさんは裏に何かを隠していつつも、日常で見せる笑顔が非常にかわいいですね。その中で拷問部屋で嗜虐的な一面も見せてくれます。

『裏のヴィランさん』第6話より ©Ko-dai/ワニブックス
Ko-daiさん:
かわいい部分と、「ヴィラン」としての怖さは意識しています。「怖さ」の表現の仕方は、キャラクターそれぞれで変えていきたいなと思っているので、今後も楽しみにしてほしいポイントです。
——兆太郎はそういった「怖さ」とは今のところ無縁ですね。
Ko-daiさん:
兆太郎は、天然主人公ですね。「普通これは怪しむだろう」ってところを一切気にしない、底抜けのお人好し。ウラノさんと対照的だからこそ、かけあいがおもしろくなるようにしています。
兆太郎は「筋肉質なキャラクターが、すごくポワポワしててかわいい」っていう要素もお気に入りです。今後は、不意に見せる本性からかっこよさも取り出していきたいです。
ちなみに、兆太郎にはモチーフが存在します。「ヴィラン」って要素を深掘りしていく中で、伝説や童話から取ってきた方がおもしろくなると気づいたんです。1巻を全部読んでいただいた方は、モチーフが一目瞭然ですが(笑)。
編集Aさん:
Ko-daiさんは、ほわほわタイプのキャラクターよりは、スタイリッシュなキャラクターをよく描かれているので、兆太郎やシロはKo-daiさんにとって珍しいタイプというか、意識してかわいく描いてくださっているのかなと思っています。
——Ko-daiさんはオノさんのような「筋肉質でイケメンのおじさんキャラ」がおそらく得意ですよね。
Ko-daiさん:
オノさんは、過去の作品や普段SNSで描いているようなキャラクターに近いですね。
筋肉は世界を救うかもしれない
——ちなみに、筋肉を描くのは好きですか?
Ko-daiさん:
昔はむしろ線の細い、華奢なイケメンの方が好きでした。でも、あるとき「筋肉……かっこいい!」と思ったんです。もしかしたら筋肉は世界を救うかもしれないと(笑)。それ以降、ガタイのいい人が好きになりました。
元々子どもの頃は『ドラゴンボール』が好きだったので、そこに戻ってきただけかもしれません。『ドラゴンボール』の筋肉も、よく真似して描いていました。
——子どもの頃から漫画を読まれていましたか?
Ko-dai:
漫画ではなくて、ビデオを借りて観ていました。アニメの『ドラゴンボール』とか『幽遊白書』が大好きで、好きなシーンを一時停止して模写して……。子どもの頃は、外で遊ぶ以外だと絵を描いたり何かを作ったり。昔から創作が好きでした。
実は、母親が美術の先生なんです。だから、自分よりも母親の絵の方が絶対にうまい(笑)。それが悔しくて、ずっと絵を描いてました。
——負けず嫌いですね(笑)。
Ko-dai:
「お母さんの絵はこんなにうまいのに、どうして僕は描けないの!」って。で、気づいたらなんかアニメの絵ばかり描いていました。
漫画制作のルーツは少年漫画
——「漫画」を読みはじめたのはいつ頃からですか?
Ko-dai:
読みはじめたのは中学・高校の頃からで、『週刊少年ジャンプ』を中心に少年漫画が好きでしたね。『幽遊白書』や『HUNTER×HUNTER』から入って、『るろうに剣心』で「長髪の男子が血を流してるシーンが好き」と気づきました。そこから『BLEACH』、『家庭教師ヒットマンREBORN!』、あとは、『鋼の錬金術師』も好きでした。
——漫画を描き始めたのも10代の頃からですか?
Ko-dai:
漫画を描きはじめたのは、上京してからです。最初は原稿用紙の使い方もわからないし、自分の実力がどれくらいのレベルなのかも全然知らなくて……。なので、漫画について学ぶために専門学校に入りました。専門学校では出張編集部の企画が実施されていたので、「何がなんでも持ち込むぞ」とたくさん描いた記憶があります。
編集Aさん:
Ko-daiさんはすごく筆が速いんですが、そこで経験を培ってきたんですね。
Ko-daiさん:
ちなみに、その頃は『家庭教師ヒットマンREBORN!』にハマっていたので、絵も影響を受けていました。アクセサリーをいっぱいつけていて、全員ジト目で。
編集Aさん:
Ko-daiさんの絵柄に少し女性向けの癖を感じるのはそこから来てるのかもしれませんね。
(※編集部注:『家庭教師ヒットマンREBORN!』の作者・天野明は女性と言われることが多い。ただし、公的に明言されたことはない)
Ko-daiさん:
そうかもしれません、僕も女性作家に間違われることが多いです。
3ヶ月で連載開始したハードスケジュール
——『そのヲタク、元殺し屋。』でデビューした経緯をお聞かせいただけますか?
Ko-daiさん:
専門学校での出張編集部がきっかけで、編集さんから声をかけていただきました。最初は戦う少年漫画の方向性で考えていましたが、当時の編集さんから「手軽に読めるものをやってみないか」と提案されたことで、『そのヲタク、元殺し屋。』に繋がりました。
実は急に決まった企画で、たしか案を出したのが2020年の2月で、急いで3話分の話を作って……連載を開始したのが5月です。
その経験を元に「意外とコメディ描けるんだな」と気づきました。
——新しいジャンルでのスタートだったんですね。
Ko-daiさん:
初挑戦のジャンルでしたが、実は描けそうな気もしていました。これまで読んでいた作品のノリやテンポ感で身についていたのかもしれません。
——どういった作品から影響を受けていらっしゃるのでしょう。
Ko-daiさん:
自覚しているのは、『D. Greyman』、あとは『BLEACH』です。『BLEACH』のギャグパートはうまい、おもしろいなぁと思っていました。『シャーマンキング』も好きでした。
——『そのヲタク、元殺し屋。』や『マーダーロック』にかっこいい戦闘シーンが多かったのは、少年漫画からの影響が伺えます。『裏のヴィランさん』ではむしろおさえていますか?
Ko-daiさん:
そうですね、日常生活を強調するためにその点は意識しておさえています。
——実際に連載を持ってみて、大変なことなどありましたか?
Ko-daiさん:
最初にハイスピードで作品を作ったときは楽しかったです。大変という意味だと、漫画を描くのって、ずっと大変なので(笑)。早くペン入れしたいなぁと考えていても、いざペン入れに入ると「……面倒くさいなぁ」って(笑)。楽しくないわけじゃないんですけど、描く工程は全部大変です。
女性の仕草を男性がやることで、男性にしかない魅力が出る
——Ko-daiさんの絵って、すごく色気がありますよね。
Ko-daiさん:
僕が好きな作家さんが、女性作家の方が多いことも理由かもしれません。女性作家の方が、「男性のエロさ」を捉えてるかもしれないですね。
僕の場合は男性キャラクターに「女性っぽさ」を入れています。仕草や目線、腰の位置とか。ウラノさんは特に女性っぽい仕草を意識しています。
——『裏のヴィランさん』に色気があるのは、そういった秘訣があったんですね。
Ko-daiさん:
僕が好きなだけかもしれないですが(笑)。
——少年漫画を読んでいた時代から、BLジャンルに興味が広がったのには何かきっかけがあったのでしょうか?
Ko-daiさん:
BLを読み始めたのは東京に来てからです。池袋に行って、商業BLを買ったりしてましたね。周囲の知人に腐女子がいて、影響を受けたのもあります。線のきれいな絵がBL作家さんには多いので、うまい絵を学ぶ側面もありました。
——BLジャンルで好きな作家さんはいますか?
Ko-daiさん:
王道ですと、はらだ先生や、中村明日美子先生です。にやま先生が描く男性のゴツさもものすごく好き。
——Ko-daiさんは、男性キャラクターのどこに萌えますか?
Ko-daiさん:
俳優さんや、街中でもイケメンがいるとスーツの腰回りに注目したりします。男性が女性的なボディラインをしていたらかっこいいと思うんです。きれいというか……エロい?
たとえば、女性のモデルさんはある種の女性的な仕草として「ひねり」を入れるじゃないですか。ああいう仕草を、男性がやれば男性にしかない魅力が出ると思っています。

『裏のヴィランさん』第2話より ©Ko-dai/ワニブックス
——それは線の細いキャラクターがやった方が映えるんですか?
Ko-daiさん:
オノさんみたいな筋肉質キャラでも全然ありです。彼が低い冷蔵庫の扉とかを開けるとき、お尻がクイって上がってたら良くないですか? 完全にしゃがまずに、前屈みになってお尻が上がっている感じ。
編集Aさん:
わかります(笑)。
Ko-daiさん:
オノさんの普段着はスリーピースのスーツなので、ジャケットだけ脱いだ姿も多く出せますね。
一方、兆太郎はちょっと抑えてます。彼でセクシーさを出すなら、もっとオスらしさを際立たせる方向かなと考えています。
——1巻の最後(6話最後)で新キャラが登場しましたね。今後の『裏のヴィランさん』の展開を教えてください。
Ko-daiさん:
2巻(7話以降)からは、キャラクターが増えてテンポも上がっていきます。ウラノさんの目的も少しずつ明かされていくでしょうし、兆太郎との関係値も変わっていくかもしれません。
シロについてもしっかり描きたいです。実は、シロは●●●●(※編集部による伏せ字)なんですよ。
——あぁー! それじゃあ、あのデザインは……。
Ko-daiさん:
はい、それを隠すためです。あとは、オノさんをとにかく可哀想な目に遭わせたいですね(笑)。
漫画家の仕事を始めてからは仕事が一番好き
——Ko-daiさんのキャラクターはすごく目を引くので、グッズ展開もすごく映えそうです。
Ko-daiさん:
僕はキャラクターの香水を作りたいです。
(一同)
あぁー!
——色気のあるご提案が! 『裏のヴィランさん』のキャラクターはどんなイメージですか?
Ko-daiさん:
ウラノさんは少しスパイシーなイメージです。
——最後に、今後漫画を描いていく上で、やりたいことや描きたいことはありますか?
Ko-daiさん:
一つ言えるのは、もっと多くの人に読んでもらいたいですね。漫画以外にやりたいことが見つかるまでは、漫画を描いていると思います。
編集Aさん:
怖いことを言いますね……。
Ko-daiさん:
わかんないですが、急に山登りとか言い出すかもしれませんし(笑)。
編集Aさん:
そっち! もしかしたら俳優デビューしたいって言いはじめるのかと(笑)。
Ko-daiさん:
漫画描いてるのは楽しいんですよね。最初は仕事をしたくなくて漫画家になろうと思ったんですよ。でもいざ漫画家を仕事にしてみると、「あ、仕事好きだわ」と思ったんです。「漫画家」っていう仕事を始めてからは仕事が一番好きです。
だから、「書くことがなくなっちゃって、他にやりたいことができた」とならない限りは、漫画をずっと描いてると思います。


裏のヴィランさん 1巻 <電子版限定特典付き>【DMM限定特典付き】
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