映画をみて映画をつくろう！　おすすめ映画制作・鑑賞漫画18選

　近年、映画制作を題材にした漫画『海が走るエンドロール』が話題となり、宝島社の「この漫画がすごい！2022」の女性部門で1位を獲得しました。本記事では、映画をたくさん観たくなる、映画を撮ってみたくなる！　そんな映画を題材とした漫画をご紹介します。
　出てきた映画をぜったいに観たくなる『R15＋じゃダメですか？』『邦画プレゼン女子高生邦キチ！映子さん』。実際の映画制作現場を描いている『オールラッシュ！ 映画を作る物語』『デラシネマ』など、幅広くおすすめ漫画18作をご紹介していきます。

• 2024年1月30日更新
• おすすめ, 少年・青年
• 職業・業界

映画制作漫画

　撮影現場の熱気が伝わってくる！　映画制作漫画9作品をご紹介します。

デラシネマ（全8巻完結）

　若者たちが撮影所で成りあがる！
　50年代の日本映画界を舞台にした、綿密な取材に基づく映画制作漫画です。助監督の主人公と大部屋俳優のもう一人の主人公の2人が、伝統だらけの撮影所で必死にもがきながら自分たちの映画を撮ろうと”奮闘”する物語です。
　黒澤明、小津安二郎、成瀬巳喜男、溝口健二、加藤泰、新藤兼人……。日本の名映画監督らの作品に少しでも興味のある方、撮影所時代の映画がどのように作られていたのか知りたい方におすすめの漫画です。かつて満州国の国策会社として設立された映画会社・満州映画協会の興隆も描かれており、当時の映画業界の成立と崩壊を知る上でとても勉強になります。

ミワさんなりすます

　映画の記憶で乗り切れ！　ドキドキ映画マニアサスペンス！
　映画マニアの29歳独身・女性主人公が、大ファンである国民的俳優・八海崇の家政婦になり替わり、彼に近づいてゆく作品です。彼になりすましがバレないように、これまで見てきた映画の知識をフル動員し、なんとか乗り切ろうとします。
　映画オタクは、映画を見ていた時間を人生に活かすことができるのか。バレたら即クビになるどころではすまない、彼女にとって人生を賭けた綱渡り。先の読めないスピーディーな展開に目が離せません。作者・青木U平の美麗な線画で描かれる妖艶な女性キャラクターたちも魅力のひとつです。

オールラッシュ！ 映画を作る物語（全2巻完結）

　映画は監督だけが作るわけじゃない！
　助監督として映画業界に足を踏み入れた主人公・波野が、自分の作品を作るために奔走する物語です。現在の邦画業界で、人手も予算もない過酷な現場のなかでなんとか自分の居場所を見つけようとする主人公の姿が描かれています。助監督の仕事って何？　監督ってどうやったらなれるの？　そういった映画業界への疑問にこの漫画は答えてくれます。
　現在『女の子が抱いちゃダメですか？』を連載中のねじがなめた先生による、苦悶の表情さえも愛らしい男子たちの表情も魅力です。

映画大好きポンポさん

　夢に向かって熱意と狂気で突き進む、胸アツ映画制作漫画！　映画好きな青年の主人公ジーン・フィニが、天才映画プロデューサーであるポンポさんと共に、映画監督・映画脚本家として成長していく姿を描いた作品です。登場人物らと一緒になって映画の都・ニャリウッドで、映画を撮影、編集し、公開する。そうした映画を作る過程を追体験できる熱い漫画です。映画好きなら誰しもが妄想する「自分が映画監督だったら」。そんな映画好きの憧れのその先を描いています。
　多くのクリエイターからの賛辞を得た本作は、pixivで65万ビューを超え話題を集め、さらに劇場アニメ『映画大好きポンポさん』が制作され2021年に公開されました。

我らコンタクティ（全1巻完結）

　夢はUFOに映画を見せること！？　ヘンテコSFロケット漫画！
　主人公のさえない会社員・カナエと同級生・中平かずきは、ひょんなことから2人でロケット開発をすることになります。凸凹な二人で一緒の宇宙を目指すことに。それは「宇宙人に映画を見せる」ため！？
　人類が誰も試したことのない境地へ向かうワクワク感が魅力の本作。主人公・カナエ自身の奥底に眠る燻ぶった想いをたぎらせ、勢いを失わないままラストまで突っ走ります。ページにほとばしる先鋭的な漫画表現が評価され、「マンガ大賞 2018」の第2位を獲得しました。

アクター（全14巻完結）

　80年代に執筆された映画業界の破天荒物語！　『沈黙の艦隊』『ジパング』『太陽の黙示録』などが代表作である、かわぐちかいじの映画やテレビドラマの撮影現場を主な舞台にした群像劇。
　超大作映画『ジーザス・クライスト』の主役に抜擢された破滅的な主人公・竹村雲母と助監督・夢野万作、清純派アイドルの菊地英子ら3人の絡み合う、愛憎渦巻く映画業界の暗部を描いた作品です。
　執筆された当時は、映画業界とテレビ業界が互いに競い合うように過激さを増していた時代。そのような刺激的な時代背景を感じられるのも、この作品の魅力です。

ファイアパンチ（全8巻完結）

　世界の終わりで撮られる映画！
　『チェンソーマン』が話題の藤本タツキ初の商業連載作品です。文明崩壊後の雪に包まれた世界を舞台に、再生能力を持つ少年・アグニの活躍を描いたダークファンタジー。本作品は、映画を愛するあまり「自分も映画を撮影しよう」と画策する登場人物・トガタの出現をきっかけに、中盤以降は映画撮影の物語へと大きく変貌していきます。
　自ら引いた物語のレールを裏切るような衝撃的な展開。トム・クルーズ、そして『スター・ウォーズ』シリーズへの言及を差し挟みながら、唯一無二のファンタジーな世界での映画制作漫画として存在感をもちます。

山中貞雄物語 沙堂やん（全1巻完結）

　23歳でデビューした伝説の映画監督を描く！
　23歳で初監督ののち26作を撮りあげたものの、わずか29歳で亡くなった悲劇の映画監督・山中貞雄の伝記漫画です。彼が撮った映画はわずか3本しか現存していませんが、小津安二郎や清水宏が大絶賛することになる若き山中貞雄監督の姿を生き生きと描いています。生き急いだ山中貞雄の人生が、著者らによる膨大な資料の読み込みによって漫画として再現されています。
　特に最終話は、残されたシナリオや資料を基に、現存していない幻の1作目を漫画という形式で再現しています。思わず胸が熱くなるラストに注目です。

映画鑑賞漫画

　映画を観て語り合いたい！　さまざまなタイプの映画鑑賞漫画を9作品ご紹介します。

邦画プレゼン女子高生邦キチ！映子さん

　こんな邦画も！　トンデモ映画プレゼン漫画！
　天然系女子高生・邦キチこと邦吉映子が、アメコミ映画かぶれの部長・洋一を相手にトンデモ邦画をプレゼンする漫画です。よくある名作映画を勧める漫画とは異なり、とにかく異様な邦画のおかしな見どころを推すという、未だかつてない映画語り漫画になっています。駄作や珍品であろうと批判するのではなく、面白がって作品語りをする邦キチに奇妙な愛着が湧くこと間違いなし。
　膨大な量の作品が制作され続け、いったいどれを観て、どのように楽しんだらいいかが難しい邦画界。邦キチのように、別の角度から楽しんで鑑賞するための糸口となる漫画です。

水曜日のシネマ（全5巻完結）

　映画を通じて出会った2人の年の差恋愛ドラマ！
　レンタルビデオ店で働き始めた大学生の主人公が、42歳の映画マニアの店長を好きになっていく歳の差恋愛漫画です。映画をまったく知らない主人公が、店長と毎週2人で事務所で映画を観ることに。
　『ニュー・シネマ・パラダイス』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『E.T.』、『レオン』、『フォレスト・ガンプ』……名作映画の鑑賞を通して距離が縮まっていく2人の恋愛物語です。『恋は雨上がりのように』や『娚の一生』などの年の差恋愛漫画が好きな方におすすめです。

R15＋じゃダメですか？

　R15特化型ドキドキ映画鑑賞漫画！
　古文の授業で源氏物語の朗読をしただけで顔を赤らめてしまう少女。そんな少女と映画オタクの少年が出会い、エッチなシーンを観るドキドキを克服するため、学校で映画を一緒に観ていくことになる作品です。恋愛とギャグのテンポがよく、映画語りもしっかりネタバレなしで安心して読むことができます。
　毎話、作品内で取り上げた作品の映画紹介があり、該当の映画を観たことがある方にもおすすめできます。取り上げる作品もミヒャエル・ハネケ監督『ピアニスト』、フェルナンド・メイレレス監督『シティ・オブ・ゴッド』、ウォルター・ヒル監督『48時間』など映画好きをうならせるセレクションになっているのも魅力です。6話に登場する、観たら死ぬ伝説のVHSの正体にはアッと驚かされるはず！

おやすみシェヘラザード（全5巻完結）

　深夜テンション百合猥談映画語り漫画！
　致命的に説明下手な登場人物たちが織りなす、女2人の映画語りウンチク漫画です。『マッドマックス』や『スター・ウォーズ』といった、有名な作品のマニアックな箇所に着目して語り続けます。
　アクション、ホラー、渋めの邦画まで多様なジャンルの映画を語りながらも、かわいい女の子同士のイチャイチャ描写も見どころの１つ。美しい先輩女子の熱き映画トークと、巻を増すごとに徐々に強くなる濃厚な三角関係百合要素からも目が離せません。

木根さんの1人でキネマ

　映画が好きな人に刺さる、映画好きの為の映画オタク漫画！
　主人公は30代独身女性で趣味が映画鑑賞な木根さん。彼女の超個人的な、映画に対する「あるある」感想が魅力の漫画です。
　『鬼滅の刃』、『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』、『ハリー・ポッター』シリーズ……映画の感想はいつだって誰かと真っ二つに割れ、そのたびに木根さんの濃い喋りが止まりません。映画オタクの木根さんがネタバレアウト派な設定で、本作は元の映画を見ていない読者にも配慮して描かれています。ネタバレNG派の方も安心して楽しめる一作です。

シネマこんぷれっくす！（全6巻完結）

　熱い映画しゃべくり青春漫画！
　図らずも映画研究会に入部してしまったオタク主人公と濃い先輩たちを中心にした、映画を語る漫画です。字幕派・吹き替え派論争、映画館はどこの座席で見るべきか、など映画好きの間で起こるあるあるをひたすら先輩たちと語り、議論を交わし続けます。「次にくるマンガ大賞 2018 コミックス部門」で第9位に選ばれました。
　膨大な吹き出しの情報量に圧倒されますが、映画好きなら共感して笑ってしまう小ネタが詰まっていることでしょう。次から次へと彼らが名前を出す映画を見たくなること必至です。

ケンガイ（全3巻完結）

　趣味と恋愛は両立するのか。映画オタクとの青春ラブストーリー漫画！
　レンタルビデオ店でバイトを始めた大学生の主人公・伊賀と、マニアックな映画以外に興味がない白川。レンタルビデオ店のバックヤードを舞台にしたシリアスな恋愛漫画です。
　本作は普通の恋愛漫画とは異なり、簡単には恋が成就せず、主人公がひたすらフラれ続ける展開が続きます。恋のお相手・白川さんは映画以外に関心を示さず、主人公・伊賀はまったく相手にされません。それでも白川との恋愛を懸命に続けようとする主人公の痛々しさに、上手くいかない恋愛の青臭さを感じることでしょう。
　映画を見続け、映画に関するラジオを聞き、本を読むことに人生を費やす白川さんの映画マニアとしての生態がリアルに描写されているのも魅力の一つです。

明日、シネマかすみ座で（全3巻完結）

　小さな町の小さな映画館を舞台にしたほのぼの映画館漫画！
　口の悪い映写技師と映画についての記憶だけが残っている記憶喪失の2人と、町の人々の出会いを中心にした物語です。幻のフィルムの修繕作業、そして普段、私たちがあまり見ることのできない映画館の裏側のお仕事も描かれています。
　映画館に来る人々との事件を通して、記憶をなくした主人公は失われた記憶を取り戻すことができるのか。日本で唯一の国立映画専門機関「国立映画アーカイブ」など、実在の施設も多数出てくる本格的な映画漫画です。

ビデオハンター 夜明けの竜（全2巻完結）

　今や懐かしのアイテムと化したレンタルビデオ漫画！
　VHSレンタル業界の裏側を豪快な演出で描いた作品です。VHSのバイヤーという、今では考えられない買い付けをめぐるバトルに胸が熱くなります。
　主人公・八尾野竜次の他社を圧倒する威勢のいいカン頼りの豪快な買い付け。舞台はマニアックすぎるレンタルビデオ市場。かつての膨れ上がるビデオ市場を前にした業界全体の景気の良さを感じとれます。当時を知る貴重な資料にもなっており、映画好きはもちろん、配信サービスで映画をたくさん見ている方にもおすすめです。

終わりに

　おすすめの映画制作・鑑賞漫画はいかがでしたか？　映画館主の漫画やVHS漫画まで幅広くご紹介しました。数巻だけの漫画もあるので、気になった映画漫画をぜひ読んでみてください！
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