SFや日常系ギャグから本格ミステリまで、さまざまなジャンルを織り交ぜた作風で大人気の漫画家・石黒正数。なかでも、傑作青春コミックと言われていた『ネムルバカ』の実写映画が、2025年3月20日(木)に公開予定! そこで今回は石黒正数ファンのDMMブックス書店員が作品をご紹介。デビュー作「ヒーロー」を含む短編集から、単巻完結の漫画の金字塔と呼ばれる『外天楼』、さらに石黒正数の名を轟かせた名作『それでも町は廻っている』、アニメのハイクオリティな映像化も話題を呼んだ『天国大魔境』などをピックアップしています。この記事を参考に、石黒正数の世界に浸かってみるのはいかがでしょうか!
目次
『石黒正数』短編集3選
Present for me 石黒正数短編集(全1巻完結)
【あらすじ】
超能力の研究所が爆発し残された能力者たちのサバイバル「ススメ サイキック少年団」、なげなわを武器として社会貢献をしようとした中年男性の悲哀を描く「なげなわマン」、そしてアフタヌーン四季賞を受賞したデビュー作、倒すべき悪の組織がなくなり喪失感に暮れるヒーローの姿を描いた「ヒーロー」など。2000年〜2004年頃に公開された作品を収録した短編集です。
【書店員イチオシポイント】
焦燥感があふれる石黒正数の初期作品集。シリアスなSFテイストからユーモアまで、幅広いジャンルの横断性が感じられます。いずれの作品にも、求めるべき未来や目的を失ってしまったキャラたちが、日常と対峙することの不安とその魅力が同時に描かれています。石黒作品初心者の方にもおすすめです。
探偵綺譚 石黒正数短編集(全2巻完結)
【あらすじ】
不思議な神社の言い伝えと失踪した先輩の物語が絡み合う「探偵綺譚」、親友にとある爆破のスイッチを託された葛藤を描く「スイッチ」、登校拒否の女の子とカラクリのような姿になった爺さんの朝を描いた「カラクリ」などの作品を収録した短編集です。
【書店員イチオシポイント】
「世にも奇妙な物語」の原作にもなった「スイッチ」も収録されている本作。一番の注目ポイントは表題作「探偵綺譚」で、『それでも町は廻っている』(以下『それ町』)の嵐山歩鳥が初期設定で登場していることではないでしょうか。ミステリ仕立ての一作で、『それ町』のワンエピソードのようにも味わえます。
ポジティブ先生 石黒正数短編集(全2巻完結)
【あらすじ】
悪の組織のシチュエーションコメディ「デーモンナイツ」、半分透けた透明人間の不思議な苦労を描く「怪奇!透明人間が来る」、一見ネガティブに見えるのに実はポジティブな先生を描いた「ポジティブ先生」などの少し不思議な世界観の作品が収録されています。
【書店員イチオシポイント】
デビュー後、初の雑誌掲載作品「夜は赤い目の世界」も収録されていますが、実は『それ町』主人公の嵐山歩鳥の初登場はこちらになります。どの物語もどんでん返しを見せていく展開の魅力は相変わらず。ありがちな設定のようでいて、ひねりのあるストーリーと凝ったキャラクターの衣装も楽しめます。『それ町』ファンは先ほどの短編集と合わせて、要チェックですね!
『石黒正数』中編漫画3選
ネムルバカ(全1巻完結)
【あらすじ】
大学の女子寮で同室になったバンド活動に打ち込み夢を追いかける先輩・鯨井ルカと、バイト漬けの怠惰な日々を送る後輩・入巣柚実。ある日、鯨井ルカのもとにミュージシャンデビューの話がやってきて……? 2人の奇妙な青春の日々を描いた日常系大学生漫画です。
【書店員イチオシポイント】
大学生のモラトリアムな期間を描写しながら多くの支持を集め、2025年春に実写映画化が決定! 監督は『ベイビーわるきゅーれ』シリーズの阪元裕吾が担当です。将来のことや自分が何をしたいのか、悩みながらもぼんやりと過ごして少しの焦りを抱えてしまう……そんな時間のリアルな様子が切なく響きます。まだまだ大人になりきれず、もがくキャラたちも愛おしいです。
外天楼(全1巻完結)
【あらすじ】
舞台は人工生命体やロボットと共存する世界。増築と改築を重ねて迷路と化した集合住宅「外天楼」を中心に、さまざまな事件がおこります。エロ本の入手に奔走する少年たちのエピソードに笑ってしまう第1話からはじまりますが、徐々に「外天楼」の一室に隠された真実へ進み……?
【書店員イチオシポイント】
1話完結型かと思いきや、各所にちりばめられた伏線が最終話に向けてつながっていく様子に驚嘆すること間違いなしの構成となっています。ハードSF的なロボットの倫理問題をユーモアを交えながら軽やかに描き、第1話登場の少年たちの行く先をミステリ仕立てに追っていく、骨太な読み応えの作品を探している方に一度読んで欲しい作品です。
響子と父さん(全1巻完結)
【あらすじ】
常識的なようでいて、ハチャメチャで愉快な父を持つ岩崎家。イラストレーターの長女はついつい父と言い合いをしていますが、父も娘のことが心配な様子。どこにでもありそうな家族のほっこりとした日常が続きますが、実はミュージシャンを目指して失踪した妹もおり……?
【書店員イチオシポイント】
お互いに口うるさくも、賑やかな家族を描いた物語につい笑ってしまう作品です。父の遠回しな物言い、長女のキレのあるツッコミ、時々癒しをくれる母のバランスが絶妙で読みやすさも抜群! ドッキリのラストも待ち構えているので『ネムルバカ』とぜひ一緒に読んでいただきたい作品です。
『石黒正数』長編漫画4選
それでも町は廻っている(全16巻完結)
【あらすじ】
とある商店街を舞台に、なぜかお婆ちゃんがメイド長を務めるメイド喫茶で働くことになった推理小説好きな女子高生・嵐山歩鳥。そこでは、彼女が巻き起こすさまざまな騒動や、商店街で巻き込まれる奇妙な事件の数々、気の抜ける恋の三角関係が繰り広げられます。
【書店員イチオシポイント】
2010年にテレビアニメ化、2013年には「第17回 文化庁メディア芸術祭」でマンガ部門を受賞するなど、人気を博した石黒正数の代表作とも言えます。商店街の女子高生メイドというキャッチーな設定からは想像できない、突如挿入される本格ミステリ感漂うエピソードや全体に漂うノスタルジックな雰囲気が唯一無二の読み応え! 読めば読むほどさまざまな発見がある、ちりばめられた仕掛けにも注目です。
それでも町は廻っている 公式ガイドブック廻覧板
【あらすじ】
あの『それ町』の全てがつまったガイドブック! キャラクター紹介、全話解説、時系列順各話一覧表、未収録原稿など盛りだくさんの内容となっています。
【書店員イチオシポイント】
『それ町』本編の魅力の1つと言えば複雑に絡まった時系列。完膚なきまでにシャッフルされた時系列が、ようやく解きほぐせるようになりました。かすかに映り込むあのコマに映ったあのキャラクターはいったい誰なのか、そして最大の疑問でもある「真の最終回」はいったいどこの話数なのか……などなど。『それ町』を100%味わって読むための、謎へ迫る手助けをしてくれる石黒正数ファンにとって必読の一冊です。
木曜日のフルット
【あらすじ】
半分ノラ猫の猫・フルットとフリーター・鯨井先輩を中心にした、ちょっと不思議な日常ギャグ作品です。
【書店員イチオシポイント】
半ノラ猫と人間のゆるい生活を、SFミステリギャグなどの多くのジャンルを組み込み描いている連載作品。国を超えて大反響を呼んだズボラレシピ「鯨井風汁なし麺」も第1巻に収録されています。バリエーション豊富なタイトルロゴや、出し惜しみのないアイディア、オチの小ネタなど、1話わずか2ページながら濃密な読み応えです!
天国大魔境
【あらすじ】
大災害によって崩壊した日本を舞台に、「天国」を目指して旅をしている少年・マルと少女・キルコ。一方で、ある壁に囲まれた世界で暮らす子どもたちは、外の世界について気にしはじめ……。
【書店員イチオシポイント】
「このマンガがすごい!2019」ではオトコ編第1位にランクインし、先鋭的な作画がアニメ好きの間で話題になるなど、アニメ化の記憶も新しいSFファンタジー作品です。文明が崩壊した世界のリアリティ、人食い「ヒルコ」との戦闘や次々に明かされていく謎。『外天楼』や『それ町』で見せた、緻密な伏線回収力からも目が離せない、現段階での石黒正数の集大成とも言える作品ではないでしょうか……!
『ネムルバカ』2025年3月20日(木)から実写映画の上映スタート!
【スケジュール】
2025年3月20日(木)から上映開始
【主題歌】
「ネムルバカ」(作詞:石黒正数/作曲:朝日/歌:平祐奈 as 鯨井ルカ)
【主な出演者】
久保史緒里(入巣柚実役)
平祐奈(鯨井ルカ役)
終わりに
本記事では、数多くのメディア化もされてきた石黒正数作品の見どころをご紹介してきました。アクションや小粋なミステリなど、強固なおもしろさを発揮し、読者を魅了し続ける石黒正数作品。何度読み返しても新しい発見ばかりのストーリーに引き込まれること間違いなしです! まだ石黒正数作品を読んだことがない方、アニメ化や実写化をきっかけに他の作品も探している方は、この機会にぜひチェックしてみてください!